ひらいてとじて、
──────君にだけ魅せる華、私だけに咲く闇


※来神組



君の事が好きで嫌いで、
こんな大きな想い
私自身、
一人で抑え切れないところにまで来てしまった。


そんなに「 」なら、いっそ君の体ごと繋がっていれば
不安になる事なんてなかったのに。

だから、全ての感情を欲するのは、道理だと思うのです。


少しずつ、少しずつ、

ひらいてはとじ、ひらいてはとざしていく


そうすれば、君は嫌でも私を忘れられないでしょう。



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「なんで神は男と女に分けたんだと思う、新羅」

「どうしたの、いきなり。神なんか信じない君が」

珍しく屋上へ来ていた臨也と鉢合わせしたのは、臨也とはクラスの違う岸谷新羅だった。
出会い頭に何を聞いてくるかと思えば、お昼休みだというのにお腹がいっぱいになってくる。

自然と臨也の隣に座り込み、焼きそばパンをほお張り始めた新羅を横目で見やる臨也はというと、
食が細いのか缶コーヒーを飲んでいる。

「今日は静雄くん、居ないの?」

「気になる?」

新羅はわざとではないが、物を聞くときに興味津々と言わんばかりに目をくりくりさせる。
興味がなくても、だ。

臨也はそれを知っていたが、面白がられているようで毎回気に障る。


「別に」

「うーん、何で僕はセルティと2つに分けられているんだろうって思うけどね」

「出たよ、狭い見解」

予想通りの返事に、空になった缶をコンクリート床に置いた。

「でもやっぱりさ、一つになってたら、抱きしめれないじゃない。温かい腕も胸も感じれないし」

「ハハッ」

「…目が笑ってないよ、臨也」

人が真剣に答えているのに!と、焼きそばパンをモリモリ口に放り込む新羅。

「とりあえずさ、臨也は好きな子を苛めちゃうタイプだから、程遠いかもね」

「何だよソレ、数え切れないくらい抱きしめてるよ?俺」

「好きじゃないから軽々しく出来るんじゃないの」

「…うるさいな。大体、今の年だったら普通…」

「普通じゃねぇな」


臨也の顔色が変わり、即座に声に顔を上げる。
屋上入り口に、ブリーチに痛んだ金髪の長身があった。

「あ、やばい」

最後の一口を放り込むと口をむぐむぐさせつつ、立ち上がる新羅。

「今お昼休みだひ、ね?しずお、喧嘩しないれ」

「メロンパン、売り切れてたチクショウ」

「あー…それは、残念だったね…」


悔しそうに告げる静雄を見て和む新羅。
だが次の瞬間また雰囲気は悪くなる。

「なんで折原と居るんだよ、新羅」

「あ、や、屋上に来たら居たからさ。俺と臨也は馴染みだし無視は出来ないっていうか…」

「馴染みだか何だか知らねぇけどよ、下半身だけで物考える尻軽女と一緒だ、こんなやつ」

「…言ってくれるね、静雄くん」


睨み合いが数秒続く。


意外にも、耐え切れなくなったのは静雄の方で、
握り締めていたビニール袋が堅くもないのにミシミシ言っていた。


「付き合ってる女が居るなら、俺に構ってねぇで女大事にしろ!」

「え」

バァン!

そのまま走って物凄い勢いで階段を駆け下りていった。
新羅はというと、目をくりくりさせて今の状況を一生懸命に飲み込んでいる。
屋上入り口のドアがぷらぷらと金具を飛ばして壊れていた。

「臨也」

「なに」

「静雄に何したの」

「…別に?」



ふふ、とほくそ笑む臨也。
新羅は、静雄が臨也を好きなことを知っていた。
ちょっかいを出して臨也が喧嘩を吹っ掛けているのも、構ってくれているのだと勘違いまでしている静雄を不憫に思っていた。

だが、臨也がそれを 『 知っている 』となると話は別だ。


「ねぇ、臨也…静雄は君が思っているよりも純粋なんだからね。ドア壊したりして乱暴だけど」

「知ってる。だから、抱きしめたりキスしただけで顔真っ赤にするしね」

「!なっ」

「そんなに驚くなよ。もう初めて会ったあの日から、俺の楽しみは彼なんだから」





でも、間違っているよ、新羅。
彼が俺を好きな前に、俺が彼を好きで嫌いで堪らないんだ。

好き
嫌い
憎い
愛してる

…全ての感情を俺のものにしたい。
何故皆判らないのだろう。
こんなにも人間の中で例外な生き物が身近に居るというのに。






「だからさ、女の子を抱いているっていうのも、それを手に入れるための手段だから」

人間の感情の1つ、『嫉妬』というやつを彼から今手に入れることが出来た。
今、胸の奥がとても熱い。
息が荒くなりそうだった。

「臨也って…面倒臭いよね」

新羅は半眼になり、紙パックのジュースを飲む。

「ハハハッ!嫌な言い方するなよ、俺は初めてこんなに本気なんだからさ」

「車にはねさせるのも好きだからなの?呆れるね」

「…俺がそうやって殺せば、俺だけのものだと感じれるからね。まぁ、この前は死なない程度に当てたんだけど」

「…。馬鹿だよ、二人とも」

「最終手段は、まぁ、セックスだよねぇ」

「ッげぇ?!…もう、僕帰りたいよ!セルティに会いたい!!」


自らの身体を愛しげに抱きしめる新羅を冷たい視線でスルーすると、屋上のフェンスから下を覗いた。
無造作にシャツを捲くった彼がズカズカと歩いているところが目に入る。



「見ーっけた。」



俺の所為で今、気持ちはとってもとっても…
とっっっても、むしゃくしゃしているんだろうなぁ。
あぁ、楽しいなぁ。




「…俺だけの化け物だよ、静雄くん」


Fin.
2010.8.28

臨也くんがシズちゃんと呼ぶ前「静雄くん」って呼んでいたのが堪らない私。

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