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現在のお相手は仗助くんと露伴先生(次ページ)です


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「…あ。」

ぽつりと窓に張り付いた粒。
窓の外を見上げれば、分厚く重たそうな雲が空を埋め尽くしている。
そうしている間に、粒はあれよあれよと増えていって、空がノイズを立て始めた。

とうとう降ってきちゃった…。
天気予報じゃ一日曇っていってたけど…

よりにもよって帰る時間になって降り始めるんだもんなあ…。神様は学生に優しくない。

なんて憂いてはみたけれど、今日の私は一味違う。

朝学校に行こうとした時にすでに泣き出しそうだった空を見て、なんと折りたたみ傘をもってきているのだ。

外の様子に気付いた生徒たちが一喜一憂する声を聞きながら昇降口に向かう。

突然の雨なのに傘を持っている。
そんなことに少しばかりの優越感を感じてしまうのだから、私ってば単純だ。




靴を履き替えて外に出れば雨脚はさっきよりだいぶ強くなっていた。

屋根の下で途方に暮れている学生たち。
中にはもう諦めて全身ずぶ濡れを覚悟で走りだした人もいる…。

さて私は何食わぬ顔で傘を開いて格好よくこの場から立ち去ってやろうじゃないか…そう思った時。


「……あ、」


屋根の下の柱に寄りかかっている人物に傘を開こうとする手がピタリと止まった

彼は確か…。

その見た目から周囲の人に恐れられ不良、ヤンキー、番長、ボス等と様々な異名をつけられ、一見近寄りがたい雰囲気を漂わせながら、でも内面は優しくそのギャップにやられる女子も多い。故にファンクラブもできておりいつも取り巻きが付いているのに今日は一人の模様。日本人離れした身長と綺麗な顔立ちから噂ではハーフなんじゃないか説が浮上しているふたご座B型の東方仗助くんだ。


「…………めっちゃ知ってるッスね、俺のこと」

「えっ、口に出てました…?」

「うん、全部」


ははっと困ったように眉尻を下げながら苦笑いする彼。
でもボスと番長は言われたことないッスと訂正もしてくれた。

おかしいな、心の中で喋ってたと思ったのに。
でもこんな失礼なことを言ってしまったのに怒らないあたり、優しいっていうのは本当なんだなあ。


「…えーと、東方くんは、雨宿りですか?」

「んー。流石に少し弱くなんねえかなあって。」

「…そうなんだ…。素敵な髪型、崩れちゃいますもんね。」

「おっ、グレート!この良さがわかるなんてあんたなかなか良いやつじゃあねえか。」


なんとなしに言った私の言葉にキラキラと目を輝かせる東方くん。

なんだか、真夏にでっかいカブトムシ捕まえた少年のようだ…。
話に聞いてたよりも随分とかわいらしい人なのかな…?

そういえば髪型をすごく気にしてる、髪型を馬鹿にした人は顔の形が変わるくらいボッコボコにされる…って噂もあったなあ。

「あ、それは正解」

にっと白い歯を見せて笑う東方くん。
また漏れてしまったのか。やばいな私。


「でも弱まる気配全くねぇし、諦めて走って帰るかなー…」

「え」


そんな。
もったいない。
水も滴るなんとやらと言うけれど、こんな中走ったらせっかく格好良くセットしてる髪が崩れること必至じゃないか


「だったら、一緒の傘入っていきますか?…えーと、…私の家、東方くんのお家から近いし」

「え、俺ん家知ってんの?」

「ううん、知らない」

「嘘下手くそかよ」


ぷっと吹き出して、東方くんはクツクツと肩を震わせる
変なやつだなーなんて言って。

………なんでだろう、貶されてるのに悪い気がしない。


「じゃあお言葉に甘えて入れてもらうぜ」

「どうぞどうぞ!」

「ん、俺が傘持つ」

「いいよ、私のだし」

「いや、俺が持たないと身長的に厳しいし。それに女の子に持たせらんねえよ、腕疲れるだろ」

「…お、おう…」


確かに私が持ったら東方くんは必然的に屈まないといけなくなる…。
それはまあ置いといて、最後の一言にはドキってくるものがあるなあ…。

…"女の子"……か……。

へへっとニヤけてしまいそうなのをぐっとこらえて傘からはみ出さないようにちょっとだけ東方くんの方による。
ナチュラル紳士ってこういう人のことを言うんだな…


「そっち濡れない?」

「うん、平気」


私、全然話したこともないのに成り行きで学校一人気者の彼と下校してる…。
それに下心なんて全くなかったけど、これって相合傘…だよね…。

うーん…いまさらドキドキしてきちゃった…

このドキドキは男の子に耐性がついてなくて緊張してるから?
それとも……相手が東方くんだから…?

う、ううん…
これ周りからは恋人同士に見えちゃったりするのかなあ…

東方くんのファンクラブの人に見られてたら、明日から学校来れないや…

………まあでも、なんだかすごく気分がいいし、東方くん良い人だし、これを機に仲良くなれたらそれでいいや。


雨の日


(ていうかさ、なんでそんな俺のこと知ってんの?)
(え?…あー、私の友達が東方くんのファンクラブ入ってて、よく話し聞かされるから覚えちゃったの)
(…ふうん。………あんたは入ってないんだ)
(………え?)


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