赤ずきんVer.2
「あ、あ、赤ずきん!?どうしたの!?」
「は?何が?」
「頭だよ頭!」
「私の頭が悪いとかそういうことを言いたい訳?」
「そ、そうじゃなくて!赤ずきんの赤ずきん家に置いて来ちゃてるよって事を言いたかったの!」
「ああ、そのこと。ずきんなら置いてきたよ」
「分かってくれたんだねって、置いてきたぁ!?ちょ、どうして!?」
「まあ、いいかなって」
「赤ずきんは赤ずきんのアイデンティティの一つでしょ?赤ずきんだってあのずきん、気に入ってたじゃないか」
「いいじゃない。別に。ずきんを取ったからって死ぬわけじゃないんだし」
「それは、…そうだけど…」
「それにさ。あんな目立つずきんがあったらアンタ直ぐに狩人のオッサンに見付かるでしょ?無い方が会うには安全だわ」
「……赤ずきん……まさか僕の為に?」
「さあ?どうかな?」
「赤ずきんっ!」
「そんなことより狼?今日はおばあちゃんがタルトを焼いてくれるそうだよ。早く行こう?」
差し出された手を掴む以外に赤ずきんの優しさを無駄にしない方法がなくて。
僕はものぐさな赤ずきんが僕と会う為に色々と考えてくれたのかと思うと嬉しさから涙が出そうだった。
「……ありがとう、赤ずきん」
「何がー?」
「ううん。なんでもないよ」
ギュッと握った赤ずきんの小さな手。
叶うなら僕が守っていけたらいいのになと、誰にともなく願いながら、僕らは二人。おばあちゃんの家へと向かった。
end...