カエルの王子様


ある国に魔女の呪いでカエルにされてしまった王子と、そのカエルに一目惚れした王女が仲良く暮らしていました。


「カエル様!今日も麗しいお姿ですわぁ」

『そんな、お世辞でも嬉しいです』

「まあ!お世辞なんかではありませんのに」

『姫はお優しいですね?私のようなカエルに優しくして下さるなんて』

「当然ですわ。わたくしはカエル様が大好きなのですもの」

『姫…っ』


カエルにされた王子(言いにくいので以後カエル王子)もまた姫に想いを寄せていました。
醜いカエルの姿にされてから王子に好意を抱いてくれるのは姫だけだったので、当然と言えば当然でしょう。


『ひ、姫』

「はい。なんですかカエル様?」

『わ、私とき、ききキスを!して頂けませんか?』


このカエル王子、かなりの純情のようですね。
緑色の身体が赤く染まっています。
姫はカエル王子の言葉に驚いたようにぱちくりと瞬きをして、にこりと微笑みました。


「嫌ですわ」

『な、何故ですか!?』

「だってカエル様とキスをしたら、カエル様は呪いが解けてしまわれるのでしょう?わたくしはどの様なカエル様も愛していますが……、今のカエル様が一番大好きなのです」


だからキスをするのは嫌だと口にする姫に、カエル王子は感動していいのやら嘆けば良いのやらで困惑気味。
けれどカエル王子もこの事ばかりはめげていられません。
愛しい姫に愛の言葉を言うのは、人間の姿に戻ってからと決めていたからです。
このままでは何も言うことが出来ないまま、姫は見知らぬ男と結婚する未来もあるやも知れません。
カエル王子は焦っていました。
そしてその焦りが、普段は純情一直線のカエル王子に大胆な行動を取らせたのです。


『姫がそのように思われていても、私は元の姿に戻りたいのです。だから、申し訳ありませんっ』

「え?」


困惑の声を上げた姫に、カエル王子は見事な跳躍力で姫の顔に近付くと、その唇を奪いました。


(ああ、初めてがカエルの姿なんて…っ)


ファーストキスはロマンチックにと夢を抱いていたカエル王子にとっては中々に決意ある行動だったようですね。
そうこうしているウチにカエル王子の口が姫の唇に合わさります。
その途端、ボフンッ!と音を立ててカエル王子の魔法が解けました。


「ああ!やっと呪いが解けました!」


これで姫に愛の言葉を囁ける!
王子の脳内にはファンファーレが鳴り響きます。
なんともまあ気の早いことで。

カエル王子から見目麗しい王子になった王子は、姫を見やります。


「姫!あなたのお陰で呪いが解けました!ずっとあなたに言いたかった言葉があるのです。私はあなたが好きです。どうか私と結婚して下さい」


王子が奪ったから呪いが解けたのですが、王子的には些細な事のようで、満を持してその言葉を姫に向かって言いました。
姫もカエルの姿の時に沢山の愛を囁いてくれました。だからこれからは私の番です。
グッと拳を握って、今か今かと姫の返事を待つ王子に姫は言いました。


「―――チェンジで」

「へ?」


けれど姫は開口一番にそう言ったものですから、王子も間抜けな声を漏らしてしまいます。


「いえ、ですからチェンジで。わたくしの大好きなカエル様に戻って下さいませと言っているのです」

「カエルにはもう戻れませんが」

「……え、」


この世の終わりなんじゃないかというような顔をして姫は膝から崩れ落ちます。
王子は慌てて姫を抱きおこ


「触らないで下さいませ!」


そうとした手を姫に振り払われました。
王子の脳内で鳴り響くファンファーレは、一気に絶望へと変化します。


「姫は私を好きだと言って下さったのに、どうして私を拒絶するのですか」


王子にとって疑問でした。
こう言ってはなんですが、王子はそれなりに自分の見目に対して自信を持っています。
だからこそ醜いカエルの姿でも愛してくれた、外見なんかでは判断しない姫に好意を抱いたのですが。
こうも拒絶される理由が分かりません。
姫は王子に対して、涙を流しながら言いました。



「わたくしはカエルの姿の王子様が好きだったのです!人間の王子に興味はありませんわ!」



鼻を鳴らす姫に王子は愕然としますが、姫にとっては一大事。
何せ姫はカエルがこの世で一番大好きだったのですから。


【カエル好きな王女】


end...

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