美女と野獣
「見た目なんて関係ありません!わたくしは貴方の内面に触れて好きになったんです!それを否定するのはいくら貴方でも許しませんわ!」
醜き獣の俺ではいつかお前が離れていくだろう。
ならば離せなくなる前に俺の前から消えてくれ。
血を吐くような思いで言ったその言葉は、何よりも愛しい姫にはね除けられた。
姫の言葉がどれだけ嬉しかったか。
醜い俺を好きだと言ってくれたその事が、どれだけ俺の心を満たしたか。
離してやれなくなると言ったのに。
「ならば離さないで下さいな」
そう言って笑った姫。花が綻ぶようなその笑顔に、天を仰ぎたくなった。
いつか姫は醜い俺が嫌になる。
だからいつでも手離してやれるように距離を置いていたというのに。
姫はその距離を軽々と飛び越えて、俺の手を取り共に歩もうと言ってくれた。
ああ。もう!
離れようとしても離してやれないんだぞ!
半ば自棄になって叫べば笑い声。
「望む所ですわ。わたくしも、貴方様から離れて差し上げる気はありませんもの」
……ああ。完敗だ。
【野獣を愛した美女】
end...