ラプンツェル2


ある日。料理をしようと台所に立ったときだった。


「何をやっているんだいラプンツェル?」

「え?料理をしようかなって」

「……料理?」


あ、しまった。
そう思った時にはもう遅い。


「料理なんかしてもし君の可憐な指に傷でも付いたらどうするの?僕が側に居るときならまだしも、ラプンツェルが一人で居るときに火傷なんてしたら目も当てられないよ!ああだからと言って君の料理が食べたくないわけじゃ勿論ないんだよ?愛しい僕のラプンツェルが僕の為に料理を作ってくれたんだから。だけど心配だからやっぱり料理は僕が隣に居る時だけにしようね?」

「分かった。分かったから落ち着いて。もうやらないから」


笑顔なのに全く感情が込もっていない声でそう言われ、必死にもう料理はやらないと言えば魔女は今度は本心からの笑顔で「いい子」と頭を撫でてきた。


またある日。掃除をしようとした時だった。


「ああラプンツェル!掃除なんかして!手が荒れたらどうする気だい!?掃除なんて僕がするから、君はそんなことをしなくてもいいんだよ」

「いや、ホコリ気になるし。箒と塵取りで手は荒れないから」

「絶 対 に 駄 目」

「……はい」


有無を言わさぬ笑顔の圧力に負けて頷いてしまった。
ちなみに箒と塵取りは奪われ、その後魔女がせっせと床を掃いていた。


またまたある日。お風呂に入ろうとしたときだった。


「……なんで居るし」

「君がもし万が一床で滑ったらと思うといてもたっても居られなくてね?ほら、僕の膝の上にお座り?髪を洗ってあげるよ」

「いや。さすがにそろそろ一人で、」

「ラプンツェルの金糸の髪を洗うのが僕は大好きなんだ。指の間をサラサラと通っていって、とても触り心地がいい。あ、身体も洗ってあげようね」

「聞けやこら」


当たり前のように私の言葉は無視された。
そして結局爪の先まで洗われ、お風呂から出た後は髪を丁寧に拭かれた。


極めつけはこれだろうか?


「ラプンツェル仕事に行ってくるね?何度も言うけれど僕が全部するから、君はただ塔の中で僕が帰ってくるまで待っていておくれ?まあラプンツェルはいい子だから僕がもう口を酸っぱくしなくても「分かったから早く仕事してこい」…もう!ラプンツェルはつれないんだから!でもそんな所も大好き!早く終わらせてすぐ帰って来るからね」


語尾にはぁとまーくが付きそうな程甘ったるい声で、ラプンツェルが止めるまでそれは止まらない。

仕事に行きたくない。というか私から離れたくない魔女は私を抱きしめてギリギリまで離さないから送り出すのに一苦労だ。
しかも時折声の色が暗くなって「そうか、世界に二人きりになればラプンツェルの傍から離れなくて良くなるのか」なんて言ってる時もあるから困ったものだ。


(全く。私じゃなかったらきっとあの魔女の相手は出来ないよね)


魔女の病んだ愛情を本気で拒絶出来ないラプンツェルもある意味困ったちゃんなのだと。
ラプンツェルが知る日は魔女が居る限りきっと来ない。



【魔女とラプンツェルの1日】



end...


わりと相思相愛なんです。
王子様?ああ、魔女がフラグをへし折ってるから来ませんよ?

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