そんな臣下達を気にした様子もなく、神子は透き通るような白く細い指を唇に当て、何かを考え込む。
しばらくしてから側室を視界に捉え、
「あの、貴女様は国王の側室様なのですよね?少なからず国王をいとおしく思われているわけですよね?私が邪魔なわけですよね?」
「え?ええ、……多分」
矢継ぎ早に問われる内容と、それに付随する威圧感に押されながらも何とか答える側室。その言葉に「多分」と付いてしまったことには誰しもが目を瞑った。
国王に一番に愛されたかった。
それには正室である神子が邪魔であった。
どうしたって夫の愛を独り占めしたかった側室は神子を嵌めようと嘘をついた。
後々責められたとしても、一時でも夫が自分のモノになってくれればそれで良かったのだ。
けれど蓋を開けてみれば、恋敵である神子に今まで恋敵(側室)とすら思われていなかったのだ。
それも国王のせいで。
知りたくなかった事実を知って、泣けばいいのか怒ればいいのか。
ただ確かなことは若干、国王への愛情が薄れたということか。
神子は側室の曖昧な肯定(と取っていいのか良く分からないが)を聞き、途端に目をキラキラとさせる。
そうして側室の側まで、普段のおっとりした足取りはどうしたと言いたくなる程足早に近寄ると、その両の手をガシリと握った。
まるで二度と離さないぞと言わんばかりの力に、この華奢な腕のどこにそんな力があったのだと思うが。
それ以上に驚く言葉を神子に言われて、側室以下同席していた者達は目を見開いた。
「あの方に見初められて十余年。これで、これでやっとあの国王から解き放たれるのですね?良かった。本当に良かった。貴女のお陰です。もちろん喜んで身を引かせて頂きます。ええ、本当に喜んで!ああ、これでもう夜中に全裸で忍び込んでくる変態や、私が捨てた紙を拾い上げて後生大事に保管している変態を見ずに済むのですね!?ああ、本当にありがとうございます!貴女は神が私にもたらしてくれた光です!」
「え、ちょっと、」
「何でしたら先程の毒薬云々のお話。あれを本当にしませんか?ほら、使われていない塔がありましたよね?あそこに私が毒を盛ったことで幽閉されたことにしましょう。幸い今は変t、間違えました。陛下も外交で居ませんし。ああ。私はもう自由の身なんですよね?夜中に怯えず過ごせるのですよね。今更嘘だったとか言いませんよね?いえ、云われても逃げる気満々ですけれども」
ノンストップで捲し立てる神子の顔は解放感やら嬉しさやら不安やらで溢れていて。
諸々の国王のやらかしたことをいきなり暴露された側室や臣下達は確かにその瞬間、心が1つになった。
『陛下(変態)から神子様を守らなければ』
→その後?