私は犬が嫌いだ。
何かこう、主人が大好きだ!ってアピールしてくる所も、懐っこくて無視してるのに尻尾を振って近寄ってくる所も。
とにかく全部、大嫌いだ。

何故いきなりそんな事を?と思うかも知れないし、愛犬家は激怒するかも知れないが。
でも嫌いなものは嫌いなのだ。
そしてふさふさの尻尾を振ってキラキラした眼差しで見上げてくる我が家の愛犬『レオ』のせいで、私の犬嫌いは悪化した。


今年3才になるゴールデンレトリバーのレオは活発で甘えん坊。
目が会うと直ぐに遊べと近付いて来ては此方が嫌がるのもお構いなしにじゃれついてくる。


そして何より、


「じゃあお母さん買い物行ってくるからね〜」


1階から母親の声がした。
2階の自分の部屋で寛いでいた私の返事を聞く前に、母親はさっさと買い物に出掛けてしまう。

仕事も昨日で一区切りしていたので特にする事もなく、ゴロンとベッドに寝転がって雑誌を読む。
するとガリガリと扉を引っ掻く音が聞こえて、またか。と無視を決め込んだ。


ガリガリガリ


ガリガリガリガリ


ガリガリガリガリガリくぅ〜ん


ガリガリと扉を引っ掻く音を無視して、そのまま雑誌を読み進める。
するとバンッという派手な音が響いた。


「紫乃葉!何で開けてくれないんだよっ!?」

「……うるさい。黙れ、バカ犬」


涙目(というか泣いた後?)の見目麗しい青年が部屋の中に飛び込んでくる。
青年は茶色のふわふわした柔らかそうな髪に茶色のキラキラした瞳。そして見上げるのも億劫な長身。
まあ、見目はかなりいいと言える。
が、しかし。


「だって今日はまだ1回も紫乃葉に遊んで貰ってないもん!紫乃葉が俺と遊んでくれるまで黙らないし、出てかないからね!」


ベッドに寝転がる私を揺すりながらイケメンが台無しになるような口調でそんな事を言う青年。
それを宥めながらはいはいと適当に返事をして、青年を仰ぎ見た。


「あんまり煩いともう部屋に入れないよ?」

「ヤダ!紫乃葉のいじわるぅぅぅ…」

「レオがやっても可愛くない」


―――さて。もうお気付きの方はお気付きだろう。
この無駄にキラキラした美青年。
名前はレオ。オス、3才。
我が家の愛犬なるものだ。

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