何かの終わりや節目。
例えば入学式。
例えば卒業式。


それに何かしらの感情を抱いたことは、ただの一度もない。


「寂しい」とも思わないし
「楽しみ」とも思わない。


私はそういった感情が欠落しているんだと思う。
そう、横でパックジュースを飲んでいる後輩に言えばきょとんとされた。


「俺は先輩が卒業するのめちゃくちゃ寂しいっすよ?」

「なんで?」

「なんでって…」


後輩は眉をヘの字にして苦笑される。


「もう先輩と学校で会えなくなっちゃうんだなーとか、先輩と簡単にイチャイチャ出来なくなるんだなーとか、大学行ったら虫除けどうやってしようかなーとか」


そうやって毎日考えてたらお陰で寝不足っす!


ニカリと太陽に負けない笑顔を見せる後輩。
確かに良く見れば目の下には隈があった。
冗談かと思った後輩の言葉が本当の事だと分かる。


「随分下らない事で悩んでるのね?そんな事を考える暇があるなら青春を謳歌なさいよ」

「むー、下らなくなんてないっスよ!!」

「下らないわよ。だって何を考えた所で明後日には私は卒業するし来月には大学の入学式だもの」


そんな下らない事を考えるくらいなら、もっと有意義な事を考えなさい。


「むぅ。有意義なってなんっスか?」

「そうね……例えば「先輩が卒業するから浮気しほうだいだー」とか?」


後輩の口調を真似て言えば呆れたような、でも少し怒ったような顔をされた。


「ちょっと、それは無いんじゃないっすか?」

「え?」

「先輩忘れてません?俺、先輩の彼氏なんですけど」

「うん。キミに告白されて肯定したからね」

「だったら、もうちょっと寂しいとか思って下さいよ」


悲しそうな顔をして俯いてしまった後輩に何を言えばいいのか分からず眉を下げる。


始まりがあるなら終わりは確実にある。
それが分かっているから終わりを悲しむ必要はない。
だからこの、まるで大型犬のような恋人が言っている言葉は正直分からない。


だって別に。
別れるとか永遠に会えないとか。
そういう訳ではないし。
そういう訳ではないのだけど、後輩にとっては『一大事』なんだろうな。


こういうのを価値観の違いと言うのか。
お付き合いというのも随分と面倒くさい。
面倒くさい、けど。


……ああ、そうか。


不意に気付いた。

prev next

戻る
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -