▽ 私と少年のはじまり
「貴女に拾って頂けて良かった。オレ貴女の為に尽くしますね!」
「いや、居座られると困るから早めに家に帰ろうよ少年」
「なんでですかっ!オレのこと拾って昨日はあんなに優しくしてくれたじゃないですか!あれは嘘だったんですか!?」
「拾ったのは君が家の前にブッ倒れてたからだし、優しくしたのは今にも自殺しそうな顔してたからね?他意はないし、むしろ今すぐ出てけとすら思ってるから」
「酷いですよ〜っ」
わーんと泣き出した金髪の少年は私の足に縋り付いてグズグズと泣く。
それを眼下に見据えながら、はぁ、と息を吐き出した。
少年はビクリと肩を震わせる。
「なんで家出なんてしたのかなんて聞く気もないけどさ、君は答えてくれそうにもないし」
「……すみません」
「別にそんなことはいいんだけどね」
多分。何処にでもあるような反抗期の事象だろうし。
そんなこたぁ別にどっちだっていいんだよ。
問題は、
「君が家に居るとして、君はいつまで居る気なのかな」
「……おねーさんが俺と一緒に暮らして上げるとか言い始めるまで」
「それ帰る気ないよね?警察に突き出したくなるような事は言わないの」
「ちょっとの間だけで良いんです!お願いします!俺をこの家に置いて下さい!」
「……はあ、良く分からないけど、少し立てば君も落ち着いて家に帰ってくれるのかな?」
「そ、れは」
言い淀んだ少年に、うん?と首を傾げるが問い返したりはしない。
うーん、と普段はあまり使わない頭を捻らせて少年が我が家に居る様子を考える。
少年が家に居る事で私の生活にこれといった大きな変化は起こらないだろう。……起こらないと信じたい。
ふう、と息を吐いて、まあいいかと頷いた。
常々適当だと言われる私は考えることがあまり得意ではないのだ。
「いいよ。好きにすれば?」
「えっ!本当に!?」
「本当に。ただし君に出来る家事はして貰うし私物をあんまり触らないって守れたらね?」
「家事は得意なんで大丈夫です!任せて下さい」
嬉しそうにはしゃぐ少年の姿に仔犬が尻尾振って喜ぶ様が脳裏に浮かんで思わず和んでしまった。
「そう。じゃあ任せようかね」
こんなユル〜い感じで少年の居候生活が始まったのだが。
この後、何故か居着いてしまった少年と一悶着あり、恋人同士になった挙げ句に同居が同棲に変化するだなんて。
この時はミジンコ程にも思ってはいなかった。
end...
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