さて、の続編。深い設定とか…
彼と出会ったのは、いつぞやの電車の中だった。


痴漢遭遇率が異様に高い私はその日も例に漏れず、誰とも知れない男に尻を撫でくり回されていた。
何度も何度も、言ってしまえば電車やバスに乗る度に痴漢に遭遇する私は、如何せん。
尻を撫でられるくらいじゃ微塵も動揺しなくなっていた。

そりゃあね?最初は嫌だったし、今だって嫌悪感はMAXなんだけれど、人間は何事にも慣れてしまう生き物だ。
それに電車もバスも私には欠かせない交通機関だし。
徒歩で大学に通うとか、そんな毎日筋肉痛と戦う真似をするくらいなら、毎日楽しながら痴漢と戦った方が楽だと思ったわけで。


誰かが助けてくれるだなんて、そんなのは架空の世界の出来事でしかない。
自分の身を守れるのは自分だけしか居ないのだと、学ばなくてもいい教訓から学んでしまった。


だけど、


「おっさん、何してんの?」


その時の衝撃は何とも言えなくて。
それでも敢えて言うならば。


困っている時に助けてくれる人が現れたら、惚れちゃいますよね?って話です。









「スカートの丈が短けぇ。変えろ」

「えぇっ、でも今日の為に買ったんだよ?」

「お前は学習しねぇのか。んなナマ足晒してたら触ってくれって言ってるようなもんだろ」

「でも今日は真也くん居るし、大丈夫かな…って」

「痴漢するような糞野郎に指一本触れさせる気はねぇが、お前のナマ足を他の野郎が見るかと思うと片っ端からぶっ殺したくなるから止めろっつってんだよ」

「……大丈夫だと、思うんだけどなぁ」

「だから学習しろっつってんだろ」


苛々したように眉間に皺を寄せる真也くん。
多分何を言っても聞いてはくれないんだろうなぁ。
へにょり、眉を下げる。
確かに。確かにね?今までの経験上、ミニスカートなんて危険だって分かってはいる。
だけどそこは乙女心。デートの時くらいは好きな人が好きな格好を見て貰いたいというもの。


「ミニスカート好きだって前言ってたのに…」

「俺以外が見るとか論外だ」

「……分かった。変えてくる」


しょぼんと肩を落としながら寝室に向かう。
真也くんは一度決めたら頑として態度を崩さない。
それが私の為でもあると分かっていても、どうにもやる瀬なくなるのはどうしてだろう。
だからと言って、下手に刺激をして“お仕置き”だなんてされたくはないのだけれど。


「穂波」

「うん?」


寝室のドアノブに手を掛けた時、呼ばれた名前に振り向く。


「可愛い格好は俺にだけ見せろ」


見惚れてしまいそうな色気満載の笑みを浮かべる真也くんに、ぶわっと顔に熱が集まる。


嫉妬深くて頑固で、時々どうしようもなく強引な彼だけれど、それでもそんな事が関係ないくらい惚れてしまっているのだから。
本当にどうしようもないのは私なのかも知れない。
だって真也くんの独占欲が嬉しくて堪らないのだから。


「うん!すぐ着替えてくるね!」


ふへっとだらしなく頬を緩めながら真也くんに返事を返して。
早く着替えてデートに行こうと寝室のドアノブに再度手を掛けた。


end...


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