▽ 会いに行こう
『ずっと守ってやるからさ。傍に…居てくんねぇ?』
照れてそっぽを向きながら言われた言葉。
その言葉に嬉しくて嬉しくて、ぼろぼろ涙を溢しながら頷いた。
暖かくて優しい大きな手のひらで頭を撫でられながら、ホッとしたように息を吐いた貴方。
守ってくれるって、言ったクセに。
目が覚めて最初に入ってくるのはチカチカと光る朝日。
それを見て、「今日も晴れか」と誰にともなく小さく溢す。
綺麗に清んだ青空。
それはあまりにも晴れやかで、私の心に暗く影を落とした。
数年前。まだこの国が乱れて居た時。私が失ったのは余りにも大きな存在で。
戦乱が終わった瞬間に無くした気力。
生きる事に疲れ、あんなにも必死に守った者の意味は無くなった。
彼が居ない。
たったそれだけで私は廃人のようになってしまった。
そんな私を笑う者は居なかったけど。
私が奪った命を愛した人が。
私を殺そうとした人達が。
今の私の状態を見たら何も言わずに帰っていく。
哀れむように蔑むように。
それを静かに見やりながら、それでも何の感情も沸かない。
懺悔も、後悔も、悲哀も。
私に残ったのはあの人に対しての変わらぬ感情だけ。
ずっとずっと貴方の為だけに生きていたのに。
私の存在意義は貴方だけだったのに。
貴方は何も言わずに逝ってしまった。
「……そっか」
ああそうだ。
私の存在意義はあの人。
あの人が居ないこの世界。
それはつまりこの世界に私は必要ないと云うことじゃないか。
不意に気付いた事実に自然と口角が上がる。
貴方の為に守ったこの世界に貴方が居ないのなら。
私がこの世界に存在する意味は無い。
なら早く。早く。
貴方に会いに行かなければ。
end...
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