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▽ 君は最期。


君の幻影ばかりを探し歩いて、一体どれくらいの歳月が経ったのだろう。
分からないくらいの時、さ迷った。
ただただ君だけを思って、世界を見てきた。

歩き続けた僕の足は最早ぼろぼろで。
いつ崩れたって可笑しくはないんだろうね。
だけど僕は足を止める術を知らないから。
引き擦りながら歩くんだ。


いつかいつか。
君に会える日まで。
君に会えると信じて。




―――……本当は、気付いているんだけどね。




「君は僕を恨んで逝ったから。だから夢にすら現れてはくれないんだろう?」



君が死の間際に放った言葉。
僕はそれに縛られている。



「だけど本心でも『出会わなければ良かった』なんて君には言われたくなかったよ」


それでも幸せだと感じるんだ。

愛される事はとうに諦めていた。
素直に腕に収まってくれただけで幸せだったから。
たとえ君がいつだって何の表情すら浮かべては居なくても。
幸せだったんだ。
それだけは間違えようのない事実。


愛して欲しい。だなんて。
流石に言えなかった。
君から奪うだけ奪って。
縛るだけ縛って。
尚、貰おうだなんて。
思うことすら烏滸(おこ)がましく思えたから。

だから、居てくれるだけで良かったんだ。
本当にそれだけが望みだった。

だけど君は。
最後の最期で僕に復讐した。



「ねえ、どうしたら許してくれる?」



君は僕に『永遠に生きろ』と言った。
君を深く愛した僕が気付くまで、
君の居ない世界を永遠に生きろ、と。

未だにその言葉の意味なんて理解出来ない。
出来なければこの身は朽ちないのに。
君の元へと行けないのに。


最早生きているのかすら曖昧な、そんな存在になってしまって随分と経つ。


それでもやっぱり理解出来ない。
君を忘れることすら、出来ない。

そうして目を瞑る度。
記憶の中の君はいつだって泣きそうな顔で僕を責め立てる。



『私を愛していると云うくせに、貴方は私の愛を信じてくれない』



君の愛を信じる?
君は僕を憎んでいるんだろう?
だから偽りだって君の愛は要らない。
虚しくてしょうがないじゃないか。



『貴方になんて出会わなければ良かった』



お願いだから、そんなことを言わないで?
僕は君に会えて本当に幸せだったんだから。



『貴方は知ればいい。信じて貰えない孤独を、寂しさを。永久とすら感じる時間の中で』



寂しかったのは僕の方だよ。
確かに君が居て幸せだったけれど。
それでもやっぱり愛して欲しかったから。



『貴方に会わなければ、――――に』



なあに?何て言ったの?
君は僕に何を伝えたかったの?
どうしてそんなに苦しそうに、泣いているの?


分からない。
君の全てを理解したいのに。
君は僕に何を伝えたくて、こんな呪い染みた身体を与えたの?
復讐だなんて言ったけれど、君がそんな気持ちでこんなことをする人だとは思っていないんだ。

君が最期に放ったその言葉を。
僕は未だに思い出せない。
それが分かれば、君が伝えたかった事が分かる気がするのに。
靄が掛かるようにそれを隠す。


だから僕は未だに答えを求めてさ迷い続けるしかないんだ。


君の姿を探して。
君の言葉を求めて。
ただ君だけを思い続けて。



『貴方に会わなければ、貴方を愛さなくて済んだのに。
傷付けずに、済んだのに』



end...

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