∵いつか愛しにゆくよ

いつまで追い続けるんだろう。
何年も何年も、ひたすらに思った。
ただ君との未来を。
だけどいつも、横顔は見えなかった。
本当に、追いかけるだけの日々だったんだと、そう思う。



「綺麗な顔だったね」


先生の顔が悲しく歪んでいたことはすぐにわかった。
それに同調してしまえば足元から崩れ落ちてしまいそうで、必死に視線を泳がせる。


「そうだね」


自分の視界が歪むのをこのまま我慢し続けたら、彼女は笑ってくれるだろうか。
思い描いていた未来からは、一番大切な人が呆気なく姿を消してしまった。


暑い暑い夏の日、
サクラちゃんは星になった。













「ずっと言えなかったけど、」

「好きだったんだ」


真っ白な墓前。
呼び慣れた名前が胸を刺す。


「あ、間違ったってば」


可愛らしい花と、デートという名目で何度も奢らされた甘味を供える。


「好きです」


「俺ってば馬鹿だけど、サクラちゃんだけは忘れないよ」


十年経って、この墓石が欠けてきても、百年経って、この体が灰になっても、ずっと思ってる。
触れることの出来なかった髪。
呼び捨てに出来なかった名前。
自分を見なかった目。



「忘れないってば」



目を閉じると、
少しだけ楽になった。


(20110929加筆修正)