俺に彼女がいるらしい、そんなことを日向が言い出した。いねーよ、どこ情報だよそれ。日向の声が煩いせいで月島やら菅原さんやら興味津々な様子で近づいてきてしまったので手のひらにじんわり汗がにじんできた。さいあくだ、日向なんだよくそ。
「なんで黙ってたんだよー」
「だからいないって言ってるじゃないすか」
「昨日なかよく肉まん半分こしてたのに!?」
「あれはあいつが金欠だって言うから」
ただの惚気じゃん、そう言いながら月島はにやにや笑みを浮かべている。田中さんの視線めっちゃこわい。
「影山の彼女みにいこうぜ」
「やめてください」



最近しゃべったこともないバレー部の人から話しかけられることすっごい増えたんだけど。
口を尖らせながらなまえがそう言ったのは帰り道がたまたま一緒になったときのことだった。どうやらバレー部の中でこいつの存在が認識されてしまったらしい。めんどうなことになったと思う。どれもこれも日向のせいだ。
「私のこと何か言ったの?」
「言ってねーよ」
「じゃあ何で」
「知らね」
こうやってたまたま一緒に帰ることでさえネタにされそうな気がして思わず深く息を吐いた。これは俺が帰らなきゃいけない方向になまえも帰らなきゃいけないだけだ。家近いししょうがねえんだよ。誰にともなく言い訳してるのがバカらしくて考えるだけ無駄だと悟った。
「姫さんって呼ばれるの 飛雄が王様だからだって」
「おまえのキャラじゃねーな」
「たしかに」
あっけらかんと笑うなまえは何も心配していないみたいだし、そういえば今日の速攻はいつもよりうまくいったし、夕日がいっそう鮮やかにアスファルトを照らしているから悩みごとなんて全部きえてしまう気がした。
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