寝ようとしたところで、なまえから借りたノートを今日中に返さなければならないことを思い出してしまった。あした返そうかと思ったけど多分あいつは怒る。時計を確認すると、針がちょうど12を指したところだった。どうせなまえはまだ起きているに違いないから今返してこよう。
インターホンを鳴らすのはさすがに迷惑だと思ったからなまえの携帯に電話をかける。予想通り数コール目でなまえの眠たそうな声が返ってきた。
「なにー」
「悪い、ノート返すの忘れてた。いまお前ん家の前にいるんだけど出てこれるか」
「ん 待ってて」
しんとした空気が辺りを包んで暗闇とひとつになってゆく。数分後にそっと開いたとびらの隙間からなまえが顔を出した。
「むりしなくてもよかったのに」
「お前怒るだろ」
「怒んないよ、わたしやさしいから」
うそつけ、そう言おうとしたけどなまえがけっこう上機嫌にわらっているからやめた。なんかいいことでもあったのか。ひそやかな笑い声がゆっくりと夜空に溶けて消える。
「こうやって夜遅くに会うとさ、特別感でるじゃん」
「そうか?」
「うん。飛雄あした朝練でしょ はやく寝なきゃ」
差し出された手にノートを置くとき少しだけ掠めた感触にむずかゆくなった。ぽんと小さな手が俺の背をたたく。
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