ミーティングが思てたより長引いて最悪や。ロック画面を開くと『部活終わった!』というJKらしからぬ簡潔な返信が数十分前に届いていた。こんなとこもかわええなと思いつつ、足早にいつもの待ち合わせ場所に辿り着くと、小さく丸まっている背中を確認する。声をかけて振り向いたなまえの両目にはうっすらの涙の膜が張っていてぎょっとした。
「お疲れ〜!」
「いやいやいや何を泣いとるん」
「何でもないねん。待っとる間に映画観てて泣いてもただけや」
「映画観てたんや」
「うん。これ友達にオススメされたやつ。ちょうど終わったところやったからナイスタイミングやな。さすが侑」
おもろかったで、と示されたスマホ画面に写る映画のタイトルを観て、数年前によくCMで大々的に広告されとったやつやと思い出す。そういや、映画好きの友達に色々教えてもらってサブスクで観とる言うてたな。イヤホンをポケットにしまったなまえの手をとり、ゆっくりと歩き始める。地面には二人分の影がゆらゆらと揺れている。
「今度その友達にまたオススメ聞いといてな。最近上演しとるやつ」
「分かったけど何で?」
「俺がオフの時に観に行こうや」
「行く〜!」
繋いでいる手をぎゅうと握られる。あかんめっちゃ可愛ええ。いやそれよりも。満面の笑顔が可愛いのはいつもの事だが、さっきの涙の跡がまだ残っているのか、目の周りが赤いのが頭から離れない。もう末期かもしれへんわ俺。



「あ〜〜なまえの泣き顔ほんま可愛かった」
「帰ってくるたび家で惚気んのやめてくれへん?」
「しゃーないやろ、俺が帰ったところにお前がいるんやから」
部屋着に着替えながらうんざりとした表情を浮かべる治を見ても、ほんなら早よ彼女作れやとしか思わない。妬みやろどうせ。みっともないわあ。
「大体、好きな子が泣いてたら普通心配するやろ?」
「正直むっちゃ興奮する」
「きしょいねんお前」
「きしょいて何やねん」
ずけずけと好き勝手言ってくる治は、好きな子の泣き顔の良さがわからないのだろう。可哀想に。双子のおんなじ遺伝子持っとるはずなのに不思議やなあ。
なまえはあまりこだわりがないのか友人におすすめされたものは大体ご満悦のようで、いつも楽しそうに感想を俺に話してくる。俺は映画あんま観んし詳しくないけど、彼女の友人のオススメ映画がアクションでもコメディでも二人だったら楽しく観れるのだと思う。
いや、でも出来ればボロボロに泣けるやつがええな。俺が映画に集中できなくなるかもしれんけど、まあそん時はそん時や。

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