飛雄がぐんぐんヨーグルトを買いに行くというので付いて行ったら唐突に「なあ俺ってモテねえのか?」と訊かれて面食らう。
「急にどした?明日雪でも降る?」
「雪なんて降るのか マフラー必要だな」
「降らないよ。今の時期に降ったら気象予報士もびっくりだよ」
自動販売機に小銭を入れながら飛雄がかすかに首を傾げる。本当に慣用句が苦手なんだな。今度の現国のテストは慣用句がいっぱい出るはずだけど大丈夫かなあ。
ってそうじゃなくて。飛雄がモテるモテないを気にしているなんて前代未聞だ。やっとお年頃の男子高校生らしくなってきたなと何だかしみじみしてしまう。
「なんでそんなこと気にするの?」
「日向に言われたんだよ」
「さいですか」
あのコミュ力お化けの日向くんからしたら、確かに飛雄の他人への無関心さは理解できないのかもしれない。
ガコンと音を立てて取り出し口に落っこちてきたぐんぐんヨーグルトを取り出した飛雄は「早く決めろ」と急かしてくる。カルピスとサイダーどっちにしよう。すごく悩む。
「モテないわけではないんじゃない?こないだ隣のクラスの女の子が影山くんカッコいーて言ってたよ」
「そうか」
「顔だけはいいもんね、あと身長」
「うるせえ」
全然格好良くない悪態をつきながら、飛雄が勝手にカルピスのほうのボタンを押した。あー今炭酸飲みたい気分になってきたところだったのに!
「なまえはモテるのか?」
「え?…いやモテないんじゃないかな」
自分で言ってて悲しくなってきた。今をときめくJKだというのに、彼氏の一人もいないなんて青春を無駄にしていると言っても過言じゃない気がする。
飛雄は顔がいいのは確かだから正直何人かの女の子が思いを寄せていても不思議じゃない。そのうち可愛い彼女ができたら、今みたいに飛雄と仲良くできなくなるのかもしれない。どんな子好きになるんだろう。
「別にお前はモテなくていいだろ」
「えーモテたいお年頃でしょ」
カルピスの蓋を開けて少し口に含むと甘酸っぱい味が舌に染みる。これが初恋の味だというのはすごくよくわかる。うまく言えないけどこうなのだと思う。
「飛雄はモテたら嬉しくないの?」
飛雄は少し考える素振りを見せてから「モテるってよく分かんねえけど、なまえがモテるのはくそムカつく」と言い放った。
「ひど〜 私の幸せはムカつくってこと?」
「そうじゃねえよ。俺以外の奴とぐんぐんヨーグルト飲むって考えたらくそムカついた」
「ぐんぐんヨーグルトは飛雄しか飲まないよ」
眉間に皺を寄せた飛雄は「そうじゃねえよ」とまた言って舌打ちをした。確かに彼の言う通り、モテるってよくわかんないし色んな人に好かれるのも嬉しいけど、私は飛雄がいてくれたらそれでいいなあ。

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