「金欠なの」
「あっそ」
「つめたい!!」
俺の目線よりずっと下にあるなまえの視線は俺の手の中にある肉まんに注がれている。隙があれば奪ってやろうとコシタンタンと狙っているのだ。俺のほうが腹がすいているに決まっている。やってたまるか。なまえの手の届かないところまで肉まんを上げると悔しそうな顔でにらみつけられた。
「ずるい」
「ずるいじゃねえよ」
「でもそこまで手上げたらあんたも肉まん食べれないんだよ」
「うっ…」
それは気づかなかった。やっぱり俺は馬鹿なのかもしれない。なまえは飽きもせずこちらを見上げている。少しだけならやってもいいかと思ってしまう俺はなんだかんだ言ってこいつに甘い。
「十分の一個ならやる」
「もうちょい」
「五分の一個」
「もう一声」
「三分の一」
「よし半分こだ」
「なんでだよ」
俺の手からひょいと肉まんを奪ったなまえはそれを器用に二等分する。おいちょっと待て、俺は納得してねえぞ。
「いただきます……ちょっ」
食われてしまう前に慌ててなまえの手首を掴んでストップをかけ、そのまま一口かっさらう。よしこれでいい。対してなまえはぽかんとした表情で俺を見上げていた。
「なんだよ」
「なんでもない」
気を取り直したように一口肉まんをかじったなまえは、おいしいとありきたりな感想を述べてから気の抜けた顔でわらう。
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