「なんなんそれ」
「ケーキ」
「けぇき!?」
 大げさに驚いた素振りを見せた侑くんは、バランスを崩さぬよう私が慎重に持っているビニール袋の中を確認しようとした。中にはショートケーキとチョコレートケーキとチーズケーキが入っている。とりあえずハズレがなさそうなやつをコンビニで買ってきたのだ。
「3つも入っとる」
「全部私のやないで。大耳と北の分」
「は!?俺を差し置いて他の男とクリスマス過ごすん!?」
 私の発言が気に障ったのか、侑くんがこちらを睨みつけてくる。過ごすというか、教室でケーキ食べるだけなのに。
 なんだか吹っ切れたのか開き直ったのか、恥ずかしげもなくこういうことを言う頻度がさらに増えてきた。こんな調子のせいで、とうとう付き合ったんですかと角名くんに先日訊かれた時は口から心臓が飛び出るかと思った。
「なら一緒に侑くんも食べる?」
「嫌や。なまえさんと二人がええ」
「……」
 思わず黙ってしまった私を見てニヤニヤしている。ほんとうにこの後輩には困ったものだ。私の体温でクリームが溶ける気がする。あかん北に怒られる。侑くんのせいで。
「……、…あした」
「明日?」
「うん」
「言ったな?約束や」
「うん」
 明日は何のケーキを食べようかなと考えながら、下駄箱にローファーを放り込む。二日連続ケーキを食べる日があってもいいかもしれない。勉強がんばってるし。北さんと大耳さんはケーキよりも和菓子と茶のほうが合いそうやなと侑くんが言った。確かに。

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