二人の形

 夢を見た。泣いている幼い自分を、彼が優しく抱き止めてキスをくれる夢。例え愛され方が異常だとしても、もう自分は孤独ではない。彼が居るのだ。

「……ジン」

 目を開きながら無意識に呟いたのは、愛しい彼の名前。真っ白な天井とカーテンは、いつだったか毎日のように見ていた物であった。自分は一体何をしていたのだろう。痛む頭を抑えながらゆっくりと起き上がれば、目に入ったのは大好きな褐色の手と、若紫色の髪。

「あ……、」

 座り心地が悪いであろう小さな椅子に座ったまま、ベッドに突っ伏し寝ているジンの髪に手を伸ばし指を絡めれば、ふわりと香るのはジンがいつも吸っている煙草の匂いだった。頬にかかっている髪を払って、ジンの整った輪郭をゆっくりとなぞる。そう、自分は彼のモノなのだ。そう思うとなんだか無性に嬉しくなって、モカはたまらずジンの手を力強く握った。

「んぁ……、なんだ、起きたのか」

 ジンの切れ長の目が突然開いて、モカは思わず手を離す。けれどもそれをジンが許す筈もなく、今度はモカの小さな手が、ジンの大きな手にすっぽりと握られた。ジンの手はいつもとても冷たいのに、今日はほんのりと暖かい。ゆっくりと指先を絡められて、モカは自分の顔が熱くなるのを感じた。

「僕……、なんで病院?」
「覚えてねーのか?ほら、ココ」
「いっ」

 起き上がったジンがもう片手でモカの頬に触れる。途端にズキンと鈍い痛みが響いて、モカは初めて自分がそこに湿布を貼っている事に気がついた。

「あ、僕、レンさんのおうちで……」
「悪かったな」
「えっ」

 ジンの顔が悲しげに歪む。こんな顔は今まで見たことがなかった。いつだって余裕な笑みで、モカに優しく手を伸ばしてくるジン。そんなジンが、弱々しくモカの身体を抱き締める。モカが恐る恐るジンの背中に手を回せば、その背はわずかに震えていた。

「頭に血が上ると何するか分からねぇんだよ、あの時だって、あの光景を見た途端に目の前が真っ白になっちまった、取られるんじゃねーかって……、そんな事、ありえねぇのにな」

 弱々しいジンの声に、モカは驚いた。それと同時に、ジンがそんなにも自分の事を愛してくれている事に心の底から悦びに震えた。ジンの背中を擦りながら、ゆっくりと呟く。

「ジン……、あのね、僕は嬉しいよ?だってそれだけ、ジンは僕の事愛してくれてるんでしょ?この傷だって、ジンがつけてくれたものなら、とっても嬉しい……」
「……まぁ、テメーなら、そう言うと思ってたぜ」

 顔を上げたジンは、いつものあの笑みであった。薄い唇にモカ自らキスをすれば、ジンはお返しと言わんばかりに真っ白な首筋に噛み付いた。







「痕、残っちまうな」

 モカの左頬にはくっきりと青アザが残ってしまった。この痣は薄くはなるが、もう一生消えないかもしれないとの事だ。ジンはその痣を指でなぞりながら、膝の上に座っているモカの小さな身体を抱き締める。今さらレンの家に行くわけにもいかず、断りのメッセージだけを送ったのちそのまま自宅へと帰宅したのだ。

「ううん、いいの」

 モカが笑う。まるで愛しいモノに触れるように、痣を両手で包み込む。その表情はとてもうっとりとしていた。

「だってこれは、ジンがくれた、消えない愛の証……、そう考えると、僕、すっごく嬉しい」
「はっ……、そうかよ」

 どうやらこのペットは、自分と同じく随分と狂っている様だ。ジンはたまらずモカをソファーへ押し倒し、唇を奪った。小さな舌を絡め取り、モカの唾液を堪能しながら服の中へ手を入れる。甘えるように背中にしがみついてくるモカが、掠れた声で呟いた。

「じん、もっと、もっと僕を、あいして……」

 モカの小さな身体を隅々まで堪能していく。幾つもの痣と痕を付ける度、素直に反応するモカが酷く愛しい。噛み付いて、お腹の痣を拳で押し込んで、痛い筈なのに蕩けた表情で悶えるモカの短パンを乱暴に剥ぎ取れば、ショーツには既に厭らしい染みが出来ていた。

「ココ、とろけてんなァ?」
「う、んぁ、はやく、ジンのほしいからぁっ」

 ねだるように腰を揺らすモカの、細い足を開かせベルトを緩める。いきり立つ熱を欲望のままに押し込めば、慣らしていない中は酷く狭い。鮮血が溢れるのも気にも止めず、モカは早く動けと言わんばかりにジンの腰に足を絡ませた。

「いいから、っ、いたいのがいいのっ、奥まで、ジンのおちんぽ、沢山ちょーだいっ……!」
「っ、くっそ、あんまり煽るな……」

 狭い中を掻き回す様、強引に腰を進めていく。そうしている内に、モカの苦しそうな喘ぎが次第に甘く蕩けた声へと変化していく。キスをねだるように突き出された舌を吸い上げて、モカの熱い身体を抱き締めた。

「じんのせーしっ、らして、たくさんっ、ほしいのっ」
「ッ……くぁ、」

 このまま二人で一つになって、溶けてしまえればどれほど幸せであろうか。誰にも邪魔の出来ない場所へ、二人で行けたらどれほど幸せであろうか。モカの狭く熱い胎内に欲を吐き出しながら、ジンはそう考えていた。





20181212
大分開いたのはスマホかわったってのもありますが単純にマンネリ化していたのもある
2100くらい