モカは非常に困っていた。何故なら大事な部分が疼いて疼いて仕方なかったからだ。ジンに戯れに触れられた場所は、一度達したにも関わらずお腹の奥底はじくじくと彼の熱を欲している。ジンはと言えば何事もなかったかの様に、いつもと変わらない表情で客人と話している。

「(うぅ……、じん、なんでへいきなのかな……)」

 チラリと横目でジンを見ながら、モカはいつもとは違う彼の姿に胸のときめきを隠せない。モカが吸血鬼の格好であるなら同じ吸血鬼にすればいいと言うジン自身の考えで、真っ黒なスーツにマント、そして羽根という良く有るコスプレではあるが、ジンのスーツ姿などモカは滅多に見られない。必死に平然を装おうと、モカはテーブルに置いていたオレンジジュースを一気に飲み干す。それでもやはり、視線はジンの方へと向いてしまう。

「どうした? モカ」
「へっ?」
「気分でも悪いのかァ?」

 顔を覗き込んでくるジンは、意地悪な笑みをしていた。それはいつもモカを虐める時の顔で、モカは先程の行為を嫌でも思い出してしまう。

「な、んでも、ない……」
「へぇ? その割りには、顔が赤いんじゃねーかァ?」

 するり、ジンの指先がモカの頬をなぞる。その刺激すらも今のモカには大きすぎて、思わず漏れそうになった声を唇を噛んで必死で堪えていれば、また笑われた。

「我慢しろ」
「う、ん……」

 そう言った後、ジンは再びモカから離れ人混みの中へと消えてしまった。一人ぽつんと残されたモカは、とりあえず邪な考えを消す為に食欲を満たそうと、豪華なご馳走に手を伸ばす。モカちゃんのためにたくさん用意したからいっぱい食べてね、と言っていたジンの母親の言葉を思い出しながら、大きな苺を口に含む。遠くに居るジンの背中をぼんやりと眺めながら、寂しさを紛らわすように口の中の甘酸っぱさを噛み締めた。





「はぁ……っ、んぁ、ぅ!」

 折角仕立ててもらったドレスが汚れちゃう、と訴えたはずなのに、ジンの手が止まる事は無かった。パーティー後、モカはてっきり家に帰るのかと思っていたが、ジンの傷一つ無いブルーの車はそのままホテル街へと向かっていった。そうして外観がまるでお城のような建物の駐車場に入ると、何も言わずに半ば無理矢理モカを車から下ろしたのだ。

「俺がどれだけ我慢したと思ってんだ」
「ひぁ、あっ、じん、まっれぇっ」

 ふかふかのまるでお姫様が寝るような大きなベッドの上に組み敷かれて、ピンクのライトの中モカはジンから与えられる快楽の波に呑まれていく。慣らしてもいないのにすんなりと熱を呑み込んでいるモカの膣内は、ぎゅうぎゅうとまるで別の生き物のようにジンの熱を締め上げる。モカだってずっと必死に我慢していた。パーティーの間お腹の奥底は疼いて堪らないし、ジンのいつもとは違うスーツ姿を見るだけでドキドキしてしまうし、自分の身体はいつからこんなに淫乱になってしまったのか、泣きそうになった事はジンには内緒にしなければならない。既に力の入らない身体をジンに揺さぶられながら、モカは必死で手を伸ばした。

「ぼくもっ……、じんの、ほしくてぇっ、……ずっと、おなかぁ、っ……うずいてたのっ!」
「は、っ、んなこた、分かってる」

 ジンが笑うと見える、この日の為に付けた吸血鬼の様な八重歯。なんだかこのままジンに食べられてしまうような気がして、モカはまた胸がときめいてしまう。その証拠に中の肉襞が締まり、ジンは欲を吐き出した。

「あ、あつ、い……っ」
「はぁ……っ、……足りねぇ」
「ひぇ、っ」

 飢えた獣の様な、獰猛な顔。真っ赤な舌で首元を舐められて、モカは食べられる、と確信した。出したばかりの筈なのにジンの熱は未だ硬く芯を保ったまま、揺さぶられる度にモカの膣を抉る。脳味噌が痺れてこのまま死んでしまうんじゃあないかと、モカは既に靄の掛かりはじめた思考でぼんやりと思う。かぷり、と噛まれてモカの腰が跳ねた。

「じんっ、もうらめ、っ、いくのぉっ、あ、ぁんっ、あ、あぁ……っ」

 モカの身体が痙攣する。足がガクンガクンとビクついて、ジンの背中に当たっても本人は特に気にも止めない。中に吐き出された欲の熱さに飛びそうになった意識を必死に繋ぎ止めて、モカはジンのシャツを握り締めた。

「なんだ、まだ足りねぇって顔、してんなァ?」
「へ、っ」

 ジンが笑う。もう息も絶え絶えなモカの下半身は、とっくの昔にどろどろだ。シーツだってもうどっちの汁なのかも分からない程にぐっしょりで、何なら折角仕立ててもらったドレスも、ジンのスーツも汚れてしまっている。それなのに、ジンは動きを止めない。

「いいか、テメーが意識飛ばしても、俺は止めねーからなァ」
「まっ、じん、ぼくもう……むりなのっ、あ……、っ!」

 頭が、身体が、快楽で壊れてしまうかもしれない。モカは涙の膜で霞むジンの顔を眺めながら、そう思う。それでも彼にされるならば、悪くない。キスをねだる様に首元に手を伸ばせば、唇を優しく噛まれた。





はっぴーはろいんですね
20191031

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