主人の想い



 何故こんなにもこのペットに対して執着しているのか、自分でもよく分からない。ただこの世界の全てに絶望し、なんの興味もない様なじっとりとした濃紫色から、目が離せなかったのは事実だ。恐らく自分は彼女の、この世界でただ一人自分しか映っていない瞳が、とても好きなのかもしれない。

「ジン……」

 モカの声はいつも小さく、そしてとても甘く、聞いていると理性が飛んでしまいそうになる。自分の手で彼女のベタついた瞳の色が変わっていく様が、酷く愛しいと感じてしまう。自分のこの歪んだ愛を受け入れてくれたのは、モカが初めてだ。涙の膜で蕩けた濃紫色は酷く美しく、シーツに傷だらけの身体を預けたまま、モカは嬉しそうに呟いた。

「もっと、いたいの……、ほしい……」

 腕に散らばる幾つもの火傷の跡。そして首もとから肩まで広がる鬱血痕と、痛々しい歯形。腹の大きな痣を指でなぞりながら、モカはうっとりと笑っている。恐らくこの関係は、世間から見るととても異常なのだろう。それでも首筋に噛みつけば甘ったるい悲鳴を漏らすモカは、自分にとっては可愛らしいペットでしかない。それは恋人という対等な関係ではなく、あくまでも彼女は、自分のモノだ。

「モカ」
「ん……っ、なぁに……?」

 はぁ、と吐息を漏らすモカの、なぜだか甘いような気がする血をべろりと舐め取った。真白な頬を林檎のように真っ赤に染めたモカの耳元で、ゆっくりと問いてみる。

「テメーは、誰のモノだ?」
「僕はね、ジンのモノ、だよ……」

 そう。彼女の身体は全て、自分のモノなのだ。この細い浅葱色の髪の一本一本から、爪先の小さなピンク色のソレまで。誰かに渡す事はこれから先、永遠にあり得ない。

「良く分かってるじゃねーかァ?」
「ひ、っぐ!ぁ、あ゛っ!」

 壊れてしまいそうな程平たい下腹部に、硬く握った拳を抉るように押し付ける。苦しそうな声を漏らしながら、それでも嬉しそうに口許を歪めているモカの表情が、堪らなくそそられてしまう。力を緩めそのままショーツの上から大事なところを指でなぞれば、しっとりと濡れていた。

「濡れてんなァ? まだ乳首も触ってねーぜ?」
「だ、って、いたいの、気持ち良くてっ……ぁ、ん……!」

 乱暴にショーツを脱がせ、皮の被った幼いペニスの先を痛いくらいにつまみ上げても、モカは気持ち良さそうに恍惚とした表情を浮かべる。灰皿に置いてあった未だ火の付いた煙草を、モカに見せつけるようにして一息吸った。

「あ……っ、それ……」
「あァ? そうだな……、何処にほしい?」
「っ……」

 モカがごくりと生唾を飲む音がする。全く根性焼きが嬉しいだなんて、やはりモカは頭がどうかしているのかもしれない。それでもそんな彼女の事が、自分は堪らなく愛しく、そしてもっと愛を与えてやりたいと思う。

「じ、じんは、どこにしたいの……?」
「俺は何処にでも、なんなら……、このまま灰皿に押し付けても構わねーけどなァ?」
「そ、それはだめ……!」

 モカが思わず伸ばした手から、逃げるように煙草を上げる。行き場の無くなった片手を胸元で握り締めるモカを見て、小さく笑った。

「なら、ちゃんと言えよ、何処に欲しいんだァ?」
「っ……、あ、あのね……」

 モカがゆったりと足を開く。どろどろに蕩けた割れ目からは蜜が溢れ、幼いペニスはくったりと首をもたげている。そのあまりに淫らな光景に、思わず頭がくらくらしてしまう。

「おちんちん、に、してほしいの……」
「……へぇ?」
「いたいとおもう、けど……、ぜったい、気持ちいい……から……」

 だめ?と視線で訴えかけてくるモカ。駄目なわけがない。今まで太ももの付け根や、腕にしかしたことがない根性焼き。この火の塊をこんな小さく、そして脆い場所に押し付けて欲しいだなんて、やはり彼女は心底イカれている、そしてその要求を受け入れる自分も。

「いいぜ、くれてやるよ……、テメーのちっせぇちんこが焼かれるのを、ちゃんと見とけよ?」
「はぅ……っ」

 モカが期待を込めた眼差しで、タバコの先をじっと見つめる。焦らすようにゆっくりと、彼女のペニスの先へと近付けていく。そして熱い熱いソレを、思いっきり押し付けた。

「あ゛……っ! い゛だ……ぁあんっ!」

 じゅうっと肉が焼ける音が響いた刹那、モカの足が大きく跳ね上がる。そうしてどろりと溢れたモカの蜜が、火の消えた煙草と指に掛けられる。彼女はこの、常人には拷問に近い行為で、達したのだ。

「は……っ、んぅ……」
「気持ち良かったかァ? この淫乱が」

 火の消えた煙草を灰皿に捨て、どろどろと蜜を溢すペニスを片手で扱き上げる。その度にモカの口からは甘い甘い声が漏れて、鼓膜が、溶けてしまいそうになる。

「んぁ、あ……いったのっ、じんまっれぇ、ぼくっ……、いたいのでいっちゃっひゃ、……っこれぇ、くせになりゅ、っ、ぁん……!」

 手を動かす度に蜜が絡み、ぐちゅぐちゅと厭らしい音をたてる。心底気持ち良さそうに涎を足らしながら喘ぐモカの、ぐちゃぐちゃな顔を眺めるのが楽しくて堪らない。イく、と小さく聞こえたモカの声に、手を止めた。

「は……ぇ、っ」
「欲しいだろ? これが……、なァ?」

 欲しいのは自分の方だ。くぱくぱと物欲しそうに収縮を繰り返す狭い狭い中に、今すぐにでもぶち込んで強引に腰を進めればどれほど気持ちが良いだろうか。モカの中はとても狭い。今まで何回も行為を行っているが、それでも中はまるで初めてかの様に熱を押し出そうとする。ぬるぬるの粘液同士を擦り合わせるように、熱い熱いソレでモカの割れ目を小さくくじく。

「ほし、っ、ジンの、おちんちん……、はやくぅ……、ぁ、あぁあ……!」

 勢いをつけて一気に奥底まで押し込めば、粘液でぬるぬるの肉襞が熱を千切れそうなほどに締め付ける。片足を肩に掛け本能のままに腰を動かせば、既に達したモカがどろどろの顔で手を伸ばす。薬指に光る自分の瞳の色を認識して、また熱が大きくなった気がした。

「じん、ぼくいったの、っ、あんっ、あ、ぁあっ! ひ、ぁあ!」
「あー、たまんねェ……、なァ!」
「ひぐ、っ!」

 最早モカの喘ぎには悲鳴も混じり始めていて、それでも表情は心底嬉しそうに蕩けている。嗚呼このまま永遠に身体を重ね続ければ、モカの頭は壊れてしまうのだろうか。モカの左手と己の右手を絡めてやれば、中がキツく締まった。

「は、っ……、締まるなァ……」
「んぅ、っ……、じん、ちゅー……、ちゅーひてぇ……っ!」

 どろどろの顔でそうねだるモカの、突き出された小さな舌を吸い上げてやれば、絡めた手に力がこもる。そのまま小さな身体を抱き締めて、奥底に欲を吐き出した。





 ぐちゃぐちゃのシーツの上に横たわるモカの、身体中に散らばった幾つもの傷跡を見ていると、自然と笑みが溢れてしまう。この一つ一つを彼女は、自分からの愛だと認識しているのだ。それが自分にとってどれほど嬉しいことか、彼女に伝わっているのだろうか。

「初めてなんだ……」

 自分の愛情表現は歪んでいる。小さい頃からお気に入りのオモチャはすぐに壊してしまったし、好意を持った人に対しては彼女にする様な暴力を振るってきた。女に興味が無い訳ではなかったが、自分の愛を受け入れてくれる人が居るなんてあり得ないと分かっていたから、興味がないフリをしていただけ。

「モカ」

 この小さな少女を、いつか壊してしまうかもしれない。そう考えると怖くて堪らないのだ。寝ているモカの左頬にうっすらと残る痣を手の甲でなぞっていれば、モカの蕩けた瞳がゆっくりと開いた。

「じん……」

 モカが手を伸ばす。その手を絡め取って、小さな身体を強く抱き止める。彼女はとても暖かい。自分の体温が低い分、余計に熱く感じてしまう。それでもこの暖かさを、自分は失いたくない。背中に回された腕の確かな強さを感じながら、ジンはただただモカを抱き締めていた。



20190918

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