ペットと痴漢 仁から連絡が来たのは丁度下校のチャイムが鳴り響く頃であった。下駄箱から黒いローファーを取り出した後、杏愛は端末を取り出しメッセージを確認する。どうやら二つ先の駅のカフェで用事がある為、来るのであれば連絡を寄越せとの事だ。仁の家とは逆方向の駅な為杏愛はどうしようかと一瞬迷ったが、もしかすると仁とカフェでデートが出来るかもしれないと考え、うきうきで返事を打ち込む。上履きから履き替え校舎を出たところで再び端末から軽快な音が鳴った。「駅についたら連絡しろ……」 地下鉄への階段を落ちないよう慎重に降り、改札を通って帰宅ラッシュの満員電車へと乗り込んだ。毎日乗っているがこの蒸し暑さとたくさんの人の匂いには未だ慣れることがない。鞄を抱えてドアの角の方で縮こまるようにして、外の景色をぼんやりと眺める。いつだったか彼に連れていってもらった美味しいクレープ屋さんが目に入り、杏愛は思わず唾を飲み込んでしまった。「(ん……?)」 杏愛が違和感に気が付いたのはすぐの事だった。太股に当たる暖かい感触は誰かの手なのだろうか。しかしここは人のぎゅうぎゅうな満員電車だ。人の手が当たる事はしょっちゅうある。杏愛は気にせず窓の外を眺めていたが、なんだか様子がおかしかった。その手は確実に、杏愛のプリーツスカートの中へと入ろうとしていた。「(えっ……、い、いやだ……、でも……っ)」 こんな大勢の前で大きな声があげられるほど、杏愛は強くない。鞄をぎゅっと抱えその手が止まってくれるのを待つ。けれどもそんな杏愛の思いを知ってか知らずか、指がショーツ越しに大事なところに触れた。「(まって、だめ……!)」 杏愛の小さな男性器に触れた指が、少しばかり止まったのを杏愛は感じた。そのまま止めてくれればいい。こんな気持ちの悪い身体に触れるなんて誰もが嫌に違いない。そんな杏愛の期待は直ぐに打ち砕かれた。その指は杏愛の幼いペニスをショーツ越しにふにふにと触り始めたのだ。敏感な其所は少しの刺激で甘い痺れを杏愛の脳みそへと送り込み、お腹の奥底がきゅんきゅんと疼き出す。こんな場所で、しかも顔も分からない奴に触れられて感じてしまうなんて、杏愛はその場で泣きそうになるのを必死に堪えた。「ふ……っ、うぁ……!」 快感で確実に濡れていくショーツ。震える足に力を入れて、ドアと壁の隙間に身体を押し込み崩れ落ちないように固定した。そんな杏愛の様子を見ているのか、指の動きが更にエスカレートしていく。ショーツの隙間から侵入してきたソレは、杏愛のぬるついた割れ目を見つけてしまったのだ。「ぁ……あっ……!」 指が、知らない指が、自分の中に入ってくる。それでも杏愛の身体はその行為を快感と認識してしまう。広げるようにゆっくりと指を出し入れされて、音が、厭らしい音が、回りに聞こえてしまうかもしれないという恐怖と、紛れもない興奮が、杏愛の思考を塗り潰していく。「(こんなの、回りにバレたら……!)」 羞恥で視界が歪んでいく。それは涙なのか、目眩なのかもはや杏愛には分からなかった。ただ鞄に顔を埋め、漏れそうになる声を必死に押さえ込む。いつの間にか指が増え、中でバラバラに動かされている事にも、杏愛は気が付いていなかった。「は……っ、あ……んぐ……っ、う!」 身体が少し跳ねた後、ジワリと股が濡れていく感覚に杏愛は小さく身震いをする。達してしまった。こんなおぞましい行為で。杏愛が大人しいのを良いことに、指は動きを止めない。わざと音をたてるように動かしているその動きは、まるで杏愛を嘲笑っているかの様だ。「(こんな、こんなので、いっちゃうなんて……)」 電車が止まる。開いたドアは反対な為、杏愛の場所から人が捌ける事は無かった。それが杏愛にとって嬉しい事なのかは微妙なところではあるが。降りるのは次の駅。次で杏愛はこの地獄から解放される。達した余韻に浸りながら、いつの間にか指の感覚がなくなっている事に、杏愛は気づく。「(おわっ、たの……?)」 安堵したのも束の間、再び指が太ももへと触れる。今度はショーツをゆっくりと下ろされて、指と比べ物にならない熱い、熱いモノが宛がわれた。「(えっ……!?)」 正確には太ももの間に挟まれた、といった方が正しいかもしれない。人と目が合わない様ドアの方を向いていたのが悪かった。手の主なのであろうか、背中にぴったりと密着されて身動きが取れない。そのままゆっくりと腰を進められて、幼いペニスと、割れ目が、大きな熱に擦られる。「うぁ……っ、ひ……っく」 嫌なのに、嫌なのに、目眩がするほどに酷く気持ちが良い。自分はいつからこんなにも厭らしい子になってしまったのだろうか。こんな行為もう既に周りにバレているかもしれない。いやむしろ、もうバレてしまっても構わない。杏愛のどろどろの思考回路ではもう正常な判断など出来るわけもなかった。「い……、っく……!」 頭が真っ白になる。チカチカと星が弾けて、まるで一瞬時が止まった様な感覚。後から来るのは酷い怠さと、気持ち悪さと、股に感じる熱い液体。電車が揺れる音がやけに大きく聞こえる刹那、また遊ぼうねと囁かれた気がした。 どうやって電車から降りたのか、杏愛はあまり覚えていない。あの手の主の体液がべったりとついたショーツとプリーツスカートをそのままに、杏愛は駅のトイレの個室の中、一人俯き泣いていた。便座に置いた鞄から端末のバイブ音が聞こえるが、今はとても動ける状態ではなかった。「じん、なんていうかな……」 痴漢をされて気持ちよくなってしまっただなんて、とても口が裂けても言える訳がない。こんな姿で仁の元に行きたくなかった。せめてスカートだけでも何とかしようと、個室の中で脱ぎ始めたその時、一番聞きたくない声が遠くから聞こえてしまった。「モカ、居るんだろ」「!」 どうして、という問いは愚問だ。仁には杏愛の居場所など直ぐに分かる。端末にはGPSが付いているし、本人は気が付いていないがクラゲのキーホルダーは仁が近付けば端末で場所が分かる様になっている。具合が悪い、と言ったところで彼には嘘だとすぐ分かるだろう。杏愛はゆっくりと個室の鍵を開け、トイレを出た。「じん……」 杏愛の姿を見た仁は少しだけ驚いた顔をしたが、直ぐに元の表情へと戻る。体液がこぼれ落ちていく太ももを見れば何があったのかはすぐ分かる。むしろ杏愛が今まで満員電車で痴漢に合わなかった方が不自然だろう。身体が小さく大人しそうな杏愛くらいの少女は格好の餌食だ。それでも仁の怒りはそう簡単に収まるわけもない。「ごめんなさ、っ、ぼく、じんいがいのひとにっ……、さわられてっ、きもひよくなっひゃったのぉおっ、いやなのにっ、う……っ、ふぇえっ、ごめんなさいぃっ」 嗚咽を漏らしながら泣きじゃくる杏愛を見るのは何時ぶりであろうか。初めて病院で涙を見せた時ぐらいか。杏愛をそのまま抱き上げ頭を撫でてやれば、回された腕に力がこもる。証拠はモカのスカートにべったりと付いているし、常習犯であれば組の力を借りて簡単に見付けることが出来るが、さて見つけた後はどうしたものか。「コンクリートで埋めるか、それとも……、沈めるか……」 どんな残酷な手段で殺したとしても、果たして仁の怒りが収まるのかは分からない。自分のペットに手を出されて怒らない飼い主がいるだろうか?ぼんやりと考えながら地下鉄の階段を上がり車へと向かう。服に体液の着いた少女を抱き抱えている自分を見る周りの好奇の目など今さら気にするような性ではない。ハザードの着いた車の後部座席のドアを開き、杏愛を寝かせてスカートを脱がした。「大事な証拠だからなァ?ちゃんと保管しとかねーと、おい蓮、袋かせ」「はいはい」 運転席から伸びてきた手に握られていた袋を引ったくり、スカートを乱暴に突っ込んでいく仁の姿を杏愛はぼんやりと眺めていた。そのままドアを閉めた仁が、杏愛に覆い被さるようにして顔を近づける。「ひでー顔してんなァ、今にも死にそうって顔色だぜ」「若さん、家でいいのか?」「あァ、デートはまた今度だ」 また今度、せっかく楽しみにしていたのに、杏愛はまた涙が溢れそうになる。美味しいコーヒーを仁と二人で飲んで、サンドイッチとか、パンケーキとか、沢山食べてお話ししたかったのに。「ほら、口開けろ」「ん……ふぁ……、っ」 杏愛の小さな舌を、仁の唇が挟み込む。そのままゆっくりと吸い上げて、互いの舌を絡ませる。これが仁なりの慰め方なのだろうかと考えると、杏愛はとても嬉しくなる。もっととねだるように両腕を仁の首に絡ませれば、ニタリと笑われた。「帰ったら、汚ぇ手で触られた所、ちゃんと綺麗にしてやる」「ん……っ、……」 ゆっくりと頷けば、抱き起こされて優しく抱き締められる。暖かなその温もりと仁の香りに包まれて、杏愛は静かに目を閉じた。20190814 >>>何かしら送る
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