「練習終わった?」
『うん。いま終わったとこ。なんかやった?』
「特になんもー。ずっと家でゴロゴロしてた」
『マジかよ。俺らが超動いてたときにプリンとか食ってたんだろ』
「アイスは食べてた」
『いやそこは普通にツッコめよ』

電話越しに高尾が苦笑する。水が流れるような音がして「いまどこにいんの?」と聞けば「合宿所の外」と答えられた。てことはあれか、川とかあるのかな。いいな、涼しそう。

「涼しい?」
『想像してたよりずっと涼しい。そっちは?』
「暑いね。都会の暑さだよ」
『そっか』

流水の音に混じって澄んだ高尾の声が聞こえる。
聞きやすい音だけれど、聞き流しはしない。独特で印象的な声音は耳に心地よく、脳に吸い込まれていく。血液のように身体へ素直に流れてくるそれが、わたしは大好きだった。
ぶっちゃけるとそれ以外、あまり高尾自体に興味がない。
だから、高尾が夏休みの前半ずっと地方で合宿だと言われても、あまり寂しくはなかった。なにしろ、地方は地方でもまだ携帯は繋がるのだ。声は聞こえる。

『なぁ、』
「なーに?」
『……あー、えっと電話、アリガト』
「んーん、いいよ。高尾の声大好き。聞けて嬉しいから」
『そっか』

寂しそうな声。
高尾は聡いひとだから、きっとわたしの気持ちが高尾自身に向いていないことを分かっている。けれど、言わない。

「高尾、キスしよう」
『……、』
「ね、高尾。好きだよ」

声が。
喉の奥に絡みつく唾液を呑み込むのと同時に、その3文字も胃に落とした。

『いまは、やだ』
「…え…、?」
『俺のこと、ちゃんと好きになってくんなきゃやだ』

冷たいくせに、どこか切なげで儚い声。
ブチ、と破壊音のようなものがして通話が切れた。
喋らなくなった携帯電話というものを見つめ、ポツリ。

「…あら、反抗期」

いままでわたしの言うことに対して「いいよ」「分かった」と、『彼女のしたいことをなんでも叶えてあげる彼氏』だと思っていたのに。はじめて牙を向いてきた。
直後、黙り込んだ携帯が音を立てた。メールが届いた。


『電話じゃチューできねーよバーカ!』

高尾は高尾なりに、わたしの心を動かそうと頑張っているのだろう。なんとなく察して、わたしは小さく吹き出した。
わたしは取り敢えず緩む口元を片手で隠しながら、もう片方の手で返信を作成する。
彼が2週間後、帰ってきたら。わたしはいままでよりずっとずっと、彼に優しくしてあげれたらいいな、と思った。


高尾100%の夏企画に提出




わたしは高尾のこと、声も腕も顔も雰囲気もチャラいところも素敵だと思いますよ…!!
取り敢えず分かりにくいお話ですいませんっしたぁ!!
わたしは、高尾はきっとコミュニケーション力も高くて彼女も友達もうまくたくさん作れるひとだと思っているので、あえてあんまりイチャイチャしてない話を書きました。糖分控えめってやつですね!
しかし、この後どーせイチャこくと思います。
いやしかし、高尾素敵ですね
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