戦争が、終わった。

そんな台詞を同じ星に滞在する軍医から聞き、思わずモニターがあるだろう近場へ走り出す。後方から声を掛けるフラットライン―目を放さない方がいい軍医だが今は仕方ない―の声なんか今はどうでもよかった。
同型プロトフォームの銀鈍色の機体が脳裏をかすめる。



ディセプティコンらしくないな、貴様は。

過去にその機体に吐き捨てられたことに悔しさは感じない。それでもいいと、後からあいつに付け足されたから。
こんな感情で今満たされている時点で確かにディセプティコンとしては良くないななんて考えて、同じフェイスパーツを歪ませて排気をする機体を思い浮かべて、ようやく見えたモニターの管理室に滑り込んだ。

あれだけ、あれだけ長い確執に囚われ幾億年も続いていた戦争が俺の生きている間に終わったという事実はまだ受け入れ難い。だがだからこそ、非常に喜ばしく灰色の世界に色がついたようだった。
あいつが、帰ってくる。
生きて。生きて!

急いて震える指でコンソールのキーを叩きながら、未だ泥の星に滞在している我らがディセプティコンの首領の信号を確認したのち通信許可の為の電子データを送ると、一拍おいたあと返信が返ってきた。答えは是。
戦争終了の声明が届いてから未だ一日も経っていないのにも関わらず閣下を煩わせるのは気が向かなかったから拒否の返事が来る事も覚悟していたが、その閣下が直々に俺の通信を受けてくださると言うのだ。
普段スタースクリームの背中しか見る事が出来ない俺にとって、メガトロンは遠過ぎる存在。
閣下がどうだったとか、閣下の頭は堅過ぎるだとか(恐れ多い事だ)、少なくとも俺が知っている閣下はスタースクリームから見た閣下だ。
その閣下に直接信号を送ったのは初めてで、更に言えば返されたのも初めてだった。
早まる気持ちを押さえ付けて、早く泥の星から帰ってきて下さいという言葉を飲み込んで、キーに手を伸ばす。
いつもやっている仕事にたった一つの作業がプラスされただけなのに、どうしても息がつまる。何度もモニターを確認し「夢じゃない」とキーを押し込む前にそれの表面を撫でる。
夢であったら、泣きはしないだろうがきっとその瞬間だけ死にたくなってしまうかもしれないなぁ、なんて。口に出してから、不謹慎だったかもしれないと気付く。
慌てて周りを見回し誰もいないことを確認して、深く排気をした。
そして、高ぶった感情を悟られないよう、出来る限り声のトーンを下げて。


「――…こちら、サンダークラッカーです」

嗚呼、待ち遠しい。




-*--*--*--*--*--*- (その主からスタースクリームが死んだと伝えられたのは直ぐの事だった)




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