(オバロがトレパン先生とポッキーゲームをすると、相手は真顔で、純粋にポッキーを味わいつつ 唇が触れ合うギリギリでポッキーを折ります。 http://shindanmaker.com/285703 っていう診断より。)




トレパンのメディカルルームにオーバーロードが入り「ポッキーゲームとやらをしようじゃないか先生」とのたまったのは突然だった。

「ゲーム、ね」

オーバーロードのいうゲームといえば思いつくのは大体決まっている。拷問か、捕虜を玩具がわりにいたぶって殺すかだ。それをさらに分けたってどうせクイズに答えられなかったら一本ずつ神経回路をちぎって次は指だとかちぎられたパーツを見てそれが誰のものだったか当てるだとか、とにかくろくでもないものだ。

次点でトレパンが危惧したのはその矛先が自分に向けられることで、それだけは何がなんでも回避しなければならない。オーバーロードがぽんぽんと簡単に物事を決めるので、その子供のような狂気がいつこちらに向いてもおかしくないことをトレパンはよく知っていた。

「それで、被検体は?」

「そんなものないよ?」

にこり。

びくっ。

唇をあげたオーバーロードと機体を竦ませたトレパンはまさに相対的だったが、それを見るものはいない。

オーバーロードが背中に隠していた何かを取り出す。それは手錠か、はたまたチェーンソーか、それとも誰かの死体の一部か。


「…顔をあげてくれ、ドクター」


頼む言葉とは裏腹に、トレパンの俯いた視線を自分に合わせるように細い顎を大きな指先が持ち上げる。

今度こそ殺される──

ひとつ大きく震えたトレパンが深呼吸をして、それでもまだ死への恐怖が拭えずおずおずとオプティックを点灯させると、大きく映ったオーバーロードの、その手。…手?

「、ん!?」

頭が掴まれるのかと警戒し、オーバーロードの全体像を見ようと探すもその手が迫る衝撃で焦点が合わないトレパンの、無防備に開いた唇に何かが押し込まれる。

甘い。そして細い。歯を下ろせばそれは容易くポキリと折れ、呆気なく口の中で溶ける。


「…菓子、だな」

「ポッキーというらしいんだけどね」


ここからが本題、と大きな青が小柄なオレンジに向かい合う。口に菓子を突っ込まれて拍子抜けしたものの、話が終わってないことにもう勘弁してくれと思っても相手はオーバーロードである。トレパンの緊張が溶けるのは当分先だろう。


「それはどういうゲームなんだ?よもや舌に穴開けてぶっさして引っ張ってスプリットタンでも作る気じゃないだろうな」

「あぁ、それもいいね」

「…忘れろ」

「貴方がいないところでやってあげるから安心してくれ」

「あーもう…」

口をすべらせ余計な拷問方法を伝えた自身の口を呪いながらトレパンは続きを促す。


「このポッキーってやつの端を口で加えて食べてくだけのゲームだよ。貴方とやりたくてね」


「度胸試しってやつか?なるほど………は?なんだって?」

「ふふ、ただの度胸試しだよドクター」

「ちょ、オーバーロード、こらっ…」


哀れな医者の抵抗をほんの少しの指の力でだけで封じ込み、オーバーロードは容易くトレパンの正面を陣取る。


トレパンは恐怖の対象に見つめられさらにはその足に跨らされるというある意味拷問な状況に気が遠くなった。「…ひ、ぅ」大型機の一挙一動に悪寒に震え恐怖に怯える彼をオーバーロードが微笑を浮かべ眺める。

ようやくオーバーロードが体制を整えさあ、とポッキーを出した頃にはその膝の上には憔悴しきったトレパンがへたっていた。


「お前さんはこんな一介の医者と度胸試しなんぞしてどうしたいのかね…」


精一杯の抵抗は聞き流されるか拒否されるかの二択の結果にしかならない言葉しかない。

「先生は小さくて可愛らしいからね、」

つい、と答えになっていないことをオーバーロードが笑って返した。


「じゃ、やろうか」

「ぅ」

「それとトレパンせんせい」

「!…なんだ」

「頑張ってね?」

「!!!」


それはつまり、至近距離で向かい合った上さらにゲームをしろということか。両端を一緒に食えと。

神なんていない、とトレパンはスパークの底から呪う。そんな彼の前でオーバーロードがポッキーを咥えた。どうやら現実逃避すら許してもらえないらしい。


ついと口で支えられたポッキーが唇に当たり、トレパンも同じように銜えると、早速オーバーロードが一口かじった。厚いふっくらとした唇が目の前にあり、物を咀嚼する。耳よりも先に届く唇からの振動が生々しくトレパンは

身震いした。そして思った。

…やらねば食われそうだ。

オーバーロードの目よりも先に視界に入る唇から視線を逸らし、一口。

嫌でも僅かに見える唇がつりあがったことにぞっとしたが、久方ぶりに口に入れる濃厚な甘味は引き際をわからなくさせた。


ぱき、ぱき、ぽきり。

ポッキーに視線を落とすトレパンはいささか驚いた様子のオーバーロードに気付かない。甘味を食べることに夢中になっている。

仕方ないだろう過度のストレスは貯まる一方なのに頭を使うことを教えなくちゃならないんだから、とブレイン内では一応言い訳じみた事を考えるトレパンであったが、口の中で溶ける高純度エネルゴンは実際安心感をもたらしていて。

あと少し、と視線をあげた先には僅かに漏れる排気を感じるほどに近くなった唇。トレパンからすれば二口ほどだろうが、オーバーロードからすればトレパンすらもぱくりと食べてしまいそうな量しか残っていない。



オーバーロードが身じろぎして唇を開きかけたのを合図に、ぱきん、と軽い音が両者の間を割いた。




「…ぁ、」

「…おやおや」


オーバーロードが進めようとしたポッキーを折ってしまったという後悔と、いくら美味かったとはいえあんなはしたなく食べ続けてしまったことへの羞恥心がじわじわとトレパンを苛む。気づかぬまに片手で抑えられた背中の大きな手も恐ろしい。そしてすごく恥ずかしい。とても恥ずかしい。


「…わたしの、負けだ」

「だねぇ」

そう言ってオーバーロードはまたポッキーを銜えた。

「ん」

「ん?ってお前さん……」

突き出されたそれに、さあとオイルが引く。


「このゲームの真髄はさ、相手の恥ずかしがる姿を見ることなんだよね」

「はあ」

「そしてもう一つあってね、私はそれを求めてたんだけど」


一旦突き出すのをやめてその一本食べたオーバーロードが語る。

たった少しの時間しかたっていないことに戦慄するトレパンはやはり機嫌を損ねたのではと身構える。


「…それは?」

「キス」

「は」

「キス。接吻。」

とんでもないことを事も無げにのたまって彼はニッコリと笑った。



「ドクターから愛情表現をいただきたかった、なんて思ってはいけないかな?」


それでいけないと言えたら文句はない。

CEでもあるまいし、と言う言葉は飲み込んだが、やっぱりオーバーロードの笑顔はそのままで。どうやらオーバーロードは機嫌を損ねたわけでもないが、この目的を達成するまで逃がす気もないようだ。


「私なんかの愛情などあってもなんの得にもならないと思うがね」


どうせ技術を得るための薄っぺらな信頼の土台になるだけだろう。

脅され半分諦め半分、ポッキーゲームはもうごめんだとトレパンは立ち上がる。それに反応してポッキーを銜えるオーバーロードを一瞥し、少しブレインで後悔と不安を抱え、彼の銜えたポッキーを避けた。

「ドクター?」

咎める声は聞かなかったことにした。一気に距離を詰める。



「………これで満足か。」


本人のやって欲しいことはやったのだし怒られることはないだろうと踏んだ上での行動だったが、やはり失策だったか、と硬直したオーバーロードを見て思う。

私の死因はキスか、なんて的外れなことも思い浮かんだ。たかが数分でトレパンはたいそう疲れていたので。


けれどリペア台から飛び降りてもオーバーロードは動かなかった。むしろトレパンを見てるか見てないかも怪しい。

後でなにかされないかとまたひとつの覚悟をして、それでもやはりこの状況から抜け出せる喜びがはるかに勝る。

もう、彼の動きを唇なんていう敏感な箇所で感じるのも吐息を感じるほどの近さになるのもごめんだった。

とはいえ、やっぱり勢いに乗りすぎただろうか。

ゲームに興じた時よりもスパークがむず痒く、そしてなによりフェイスパーツがとてもあつい。真っ赤な凶悪なオプティックと、近い唇が追い立てるようにブレインで再生される。



はやく、早くここから離れないと。



「…トレパン、やはり貴方はとても可愛らしいね」


「っそりゃお前さんの勘違いだろう

よ!!」



背中にかけられた声にぎょっとして走り去るトレパンを、頬を愛おしそうに撫でるオーバーロードが笑った。








※トレパンってどこにいたっけな方用に説明
※ただ語りたいだけかもしれない

(トレパン先生はシャドウプレイの回で紹介されるリリンクイッシュクリニックっていうところの記憶外科医のお医者さんです。オレンジと白の機体と黄色いお目目の細身の人。クロームドームもといタンブラーにその技術を教えた人でもあります。やってることはあれですが一応オートボットの模様。
過去に破壊大帝になる前のメガトロンを危険視した上からの命により彼を書き換えようとしたり音波の頭を掻っ捌こうした前歴があり、音波さんを救出しに来たオバロ様にその技術を教えろと攫われます。体格差が半端ない。
その後ロストライトでのオバロ暴走回でクロムドがその技術を使ってフェイズシクサーズの秘密を探ろうとしたりオバロ様を起こしちゃったりオバロ様を止めたりするのですが、ちょうどその回の中でオバロ様が「技術を教えてもらってるのがばれてメガトロン様に殺されてしまってね」と言っているので故人。なんてこった。
というわけでここのサイトで書くオバトレは補足がない限りオーバーロードがトレパンに技術を教えてもらうために連れ去った後〜メガトロンに殺されるまでの期間の中での話が多いです。今のところそれしかないです。いつか幸せなオバトレとか書きたいけど恐らくもう少し後のことになるでしょう。重要キャラとかかわる関係か死後も漫画に登場するので公式のネタに期待。ここまで読んでくださった方は猛者です。たいへんありがとうございました。)
戻る







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -