「狭い痛い詰めろこの野郎!」
「ショック!!俺は十分に詰めている」
「詰めててもそのデケェ図体でやべえの!わかれよ!」
「イロジカル」
「その一言でまとめんな!」
狭苦しいポッドの中騒いでいると、またどこかからぶつかる音とパーツが痛んだ。見上げれば息を呑むほどに間近にあるモノアイが見えるこの船の中、心底嫌と言う気持ちが湧き上がる。
「これセイバートロンに着くよな!?」
「俺を疑うか。ショックな奴め」
「てめえのその口癖がこんなムカつくの初めてだよクソが」
「大ショック」
「うるせっ!!」
銀色の腕がミサイルごと紫の機体を叩いた。

「ショック。サウンドウェーブは行方不明かつ不在、私の操縦が嫌ならば貴様がやれ」

まったくイロジカル極まりない。オプティックの明度を落としてモノアイの科学者はため息のような仕草をしたのを、彼とすし詰め状態になっているスタースクリームは見、そして首を振る。(やっぱあいつがいねぇと気が狂う)と。
「ショックウェーブ、」


「…今アイツの名前を出すんじゃねえよ」

ひどく機嫌を害した、そのように目尻をあげて彼はようやくモノアイを真正面から睨みつけた。モノアイ、もといショックウェーブはそれをさして気にしたようなこともなく、かといって頷きもせず船の操縦に身を徹したようだった。
―――狭い船の中、カタカタとパネルを叩く音がする。
それをちらと横目で見て、少しばかりのしかかったような重みがパネルを叩く度にわずかに揺れる。暗紫の機体がちらつく。
しかめっ面をして、スタースクリームは肘で顎を支えた。
ムカつく、と耐えきれぬ愚痴がこぼれた。

どうしてここまでイラつくのかはわからない。
だがそれは、メガトロンが死んだ事実がとてつもなく遠いところにあるような、けれどその他の事にもわだかまりが残った嫌な感情だった。

サウンドウェーブに依存していなかったとはいえない。が、そうというまでまともに気付けなかったというのが本音だ。サウンドウェーブサウンドウェーブと何度も呼びそのつど使ってきたのはニューリーダーへの布石であり、余計な感情なんてなかったはずだった。
なのになんでか、ぐるぐると気持ち悪さが渦巻いていて。
サウンドウェーブ、とその名前を呼ぶだけで泣きそうになった。
(あのメガトロンが殺されたときにさえなにも音沙汰がなかったなんて、)生体反応もなく、かといって脱出ポッドに向かう最中ショックウェーブと共にそこらへんを通っていったが死体もなく、おそらくはどこか気づかぬ場所に死体でもあったんじゃないかと思う。だがそうと決めつけたくないのは、一体どうしてだろう。

サウンドウェーブ。お前、どこにいってやがる。帰ってこい。帰ってこいよ。

今すぐ、とまでは声が出た。
けれど、どうしてもそのあとが続かない。
息がすごく苦しくて、これもあれもぜんぶサウンドウェーブのせいだ、とスタースクリームは思った。
「どうして、サウンドウェーブ、」
ぎこちなくではあるが、萎れる銀翼をショックウェーブの爪先が撫でる。その行為だけで何かかけられた台詞はない。それでも、いないよりはましだった。
「サウンドウェーブ…っ」
なんて情けない。
そうは思っていても、考えないようにすればするほど声が震えて。

「聞こえねーのかよ、ばか…」

握り湿られた拳の上に、細長い指がそっと乗せられたような気がして、スタースクリームの視界が歪む。
「ばーか、ばかやろうだ、おめーはよ」
情報参謀のくせしやがって、ちったぁ情報残してけってんだよ、とスタースクリームは言った。
銀翼を撫でていた手が頭に移動する頃に、ポッドの中一人の嗚咽が響いていた。







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