べと、とした不快感が間接を犯した。カセットにまでそれが流れ込んで吐き気がする。
「うっ、あ」
「気持ちいいかね、ブロードキャスト君」
「ないないないない!気持ち悪い!やだ!!」
目の前で愉しげに彼が笑う。気持ち悪いだなどと嘘をつくもんじゃない、唄うような口調で、どこから調達してきたのかもわからないくらいの黄金色の液体をかけ続ける。とろけたそれらが配線に流れ込んでどこかがショートしそうだ。命にこそ別状はないけれども、鏡の世界の自分、悪のオートボットであるブラスターを信じるってのは無茶な話だと思う。

「俺っち甘いの嫌いっ」

苦し紛れの抵抗はこいつからしたらいいいたぶりの材料になるだろうことは知っていても不快感に覆われる気分なんで仕方ない。

「私は好きだ」
「ブラスターのはどうでも…っい、ひ!?」

細められた真っ赤な目に吸い込まれそうになって抵抗するのを少しだけやめた途端に襲いかかった感覚に喉奥がひきつった。ちょっと、やだ、どこにかけてんの、それ。恐る恐る視線を下げて、あんまりな光景に思わずぎゃあと叫んでしまった。
なんだ騒々しい、折角ここも甘くしてやったのに、と。口では嘆いているのに、表情だけはものっすごく楽しそうなブラスターがすごくムカつく。

「そ、んなとこ、かけないでよ…」

涙っぽい声が出た。

そう。
ブラスターは、あろうことか下半身にぶっかけたのだ。これがいつもの仲間たちに囲まれてやっていたことなら「食べもん粗末にすんなよ」とか言えるけど、だって相手はブラスターだ。ロック好きな別人のサウンドウェーブと付き合ってるのに、よく冗談って言いながら俺っちにもこっちのサウンドウェーブにも「挨拶だ」ってキスしてくるのだって一度や二度じゃない。(もちろんロック好きの白いサウンドウェーブはずるい!って怒る。そしてすっごく羨ましがる。)まあとどのつまり、いやーな予感しかしないってことだ。

「そう怯えるな…そそられる、」
「悪趣味ぃっ!!」

叫んでも、ブラスターのにんまり顔は変わらない。あやすように撫でる手は優しいのに反対側の手はするすると降りてくる。「ちょっ、あ、ンッ」ざり、と指がボタンの下を強くなぞった。かけあがる悪寒と別の感覚に声が出そうになるのを我慢するなかで、ブラスターは俺の腰を抱えあげた。膝が腹につくほど押さえ込まれて息が詰まる。はふ、と口を開けて、そこに指を突っ込まれて思わず唸った。
「んん"ん"!??」
そして、むせかえるくらいの甘ったるいそれ。
ねばつくそれは簡単には吐き出せなくて、喉に溜まる。苦しい、というかほんとに死を覚悟するほどに。

「悪くない眺めだ」
「う、っんゥ、ぶ」
「なにか言いたげだな、ブロードキャスト君」
今言えるわけないだろこうなってるのに!と睨み付ける。くすりと笑ったブラスターが戯れに口内のはちみつを啜るけど、ぐねぐねと舌を這わすもんだからまともに呼吸さえ許されない。苦しくて、呼気も吐き出せなくて涙が溢れる。そんな中、下半身にかかったはちみつを指先にたっぷり絡めた手がボタンをなぜて、そしてそのままするりと降下した。
「あ、えっ?」
ぱちんって音が聞こえる。二度目の嫌な予感に抱えあげられた脚の間、あまり見たくなかったけども、ブラスターの目の前に晒されたレセプタに視線をやった。すっごく滑らかに、その指先が入り口のスライドを開けて、えっろい動きで触っていた。途端、快感のシグナルがびりっ、と襲いかかる。

「―――ッッちょ、待っ…、んひ、ゃああっ、」
よくわかんないけどサウンドウェーブのことが思い浮かんで、すごく嫌だと思った。三日月のように弧を描いたブラスターがそれでもやめてくれなくて、さっきまで苦しくて出ていた涙が、明らかに違うものとして出てくるのがわかる。「やだ、ぶらすた、やめて」ちゅ、と優しくキスされた。それさえもひどく悲しくなって、でも気持ちよくて抵抗なんてできなくて、それがまたすごく恥ずかしい。なのにブラスターが優しくて、そうじゃないのにって声も出ない。

「安心したまえ」
「ちが、あ、」



その直後。

薄暗い機体が白にうめつくされて消えて、俺の視界も何かによって遮られた。
「っわ、!?」
「…だから安心したまえと言ったろう」

苦笑した様子でブラスターがまた笑ってるのが聞こえる。そして……わりと近くで荒い息が聞こえる。火照った体がよくわからない突然の状況に冷めた。俺っちの機体は誰かにだきしめられているらしい。
「…に」
(あ、この声、)

「何やってんのブラスタああ!!」

もう一人の、ブラスターと付き合っている方のサウンドウェーブだ!なんていう誰かの声の幻聴が聞こえた。

「何って、性」
「ア、やっぱやめて聞きたくない」
「未遂だが」
「想像する分にはブラスターとキャシーがくっついてるのもいいけどキャシー泣いてんじゃん!やりすぎ!!」
「ちょっとばかり気持ちよくしすぎてな」
「エロい!うらやましい!だけど許せねぇ!!」

一人でばたんばたんと悶えるサウンドウェーブとしたり顔のブラスターを見て、少し覚めたブレインで考えて、べとつくレセプタを隠してそっとブラスターに視線をやる。ホントに冗談だった?って悔し紛れに通信を送ると凶悪なほどきっれいな表情が(これでも一応同じ顔なんだけど。解せない)こちらを向く。
そしてぐっと近づいたその顔に思わず逃げるように仰け反った俺っちの頭、その後ろに手を回されてまた機体熱が上昇してしまった。
(あ、ちょ、やば)
しなやかな指先で組まれた両手が後頭部をしっかりと支える。細められた赤いオプティックに水色の光が2つうつって、

「…冗談でなければどうするかね?」
「……」
「ブラスター!!」





―――数分後、起きた俺っちが見た光景はサウンドウェーブに押さえられているもののブラスターをぶっ殺すと言わんばかりの剣幕(いや、多分というか間違いなく本気だけど)サウンドウェーブとそれを笑いながら挑発し続けるブラスターという物凄く収集がつかない状況だったので、二度寝した俺っちはぜったい悪くない。…悪くない。




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