平沢進のオーロラを聞きながら アニメ基準 あとねつ造 ユリウスが悪夢にうなされている
よくわからなくなりましたので雰囲気で読んでください




『ーーーーやってくれユリウス、お前の、その剣でッ・・・』

悪夢を見ている。自覚はしていた。彼の最後の願い、声。体を他者に乗っ取られる苦しみにか歪んだ表情。ユリウスの剣に傷つけられて血を流す、まだ幼さの残る頬。肉を傷つける感触はすでにもう慣れたはずなのに、ユリウスを未だ夢から捉えて離さないそれは殺すべきではないものを手に掛けた罰にも似ている。

『フェリス・・・・頼む』

死へと向かう彼の表情は怯えてなどいなかった。自分がやらねばならない、という強い意志を見せていた。1つの生物としての終わりを目前にしているのにその目に宿る光は何もかもをあきらめたものではない。これから先はお前らに任せたぞ、とでも言っているかのように衰えない眼光がユリウスを射抜いて、夢と分かっていてもひたすらに、もう手に入るものではないと分かっていても愚直なまでにユリウスは彼を、英雄のきざはしを確かに見せたナツキ・スバルをーーー・・・


「・・・・っは、ぁ・・・は、」

がく、と急に悪夢から目覚めた体が跳ねる。これ以上先は見たくない、という感情がそうさせるのだろうか。いつもこの夢はユリウスがナツキ・スバルに安らかな眠りを与える直前で唐突に終わる。命脈を狂わされ倒れ伏す彼の喉を切り裂き、こと切れた体の前で地面にじわじわと染み込んでいく命の液体を呆然と眺めている光景はもはや夢ではなく、ただのユリウスの記憶だ。為さねばならなかったこととは言え、「友」と呼びたかった少年を手に掛けた忌まわしい記憶。

本来安らかであるはずの眠りを脅かすそれを、忘れ去りたいとも思う。だが同時に忘れてはいけないと心が叫んでいる。彼の表情を、言葉を、声を、感情を。誰にも達成できなかった偉業を成し遂げて見せた英雄の息吹。目の前で確かに芽吹いたはずのまだ小さな双葉。だがそれはいずれ大地にしっかりと根を這って、見上げるような大樹になっただろうことは想像に難くない。

「わたしは、君を・・・」

じわりと双眸に涙が滲む。まるで空を駆ける流星がその体を削り、命を燃やすような軌跡だった。ルグニカの、世界の歴史に残されるだろう「白鯨、並びに怠惰の大罪司教討伐」を果たした少年。王選で下手な啖呵を切ったあの時のことを蒸し返すような者は一人としていないだろう。世間から見れば、確かにあれは幼さが見せる「恥」だった。

「君を・・・」

ーーーそれに、唯一感銘を受けたであろうユリウスは彼を殺した。何度自分を納得させても必要だと割り切れるものではなかった。最後まで躊躇って、結局フェリスに力を使わせてしまったのは結局その双葉を自らの手で摘み取りたくなかったからだ。群衆の前でなすすべもなく叩き伏せられて体と心に傷を負って、それでも尚立ち上がる人間の輝きを、吹き消したくはなかったからだ。

あまりにも、惜しかった。世界中が吉報に沸いている現在、それを素直に喜べていないのは皆、ナツキ・スバルと命運を共にした者たちだった。何故彼が、と心の中で叫んでも永遠に答えは出ない。

ユリウスの俯いた横顔に朝日が当たって、その命のような輝きに惹かれ思わず窓の外を見た。旅人や商人たちの憂いが取り除かれ、ますます活気に満ち溢れた王都の光景が目に入る。この様子を見せたかった。自分一人の功績じゃないから、とどうせ遠慮をするのだろう彼を讃えたかった。

「ふ、」

割り切らなくてはいけない。ユリウスはこれから先も歩き続けなければいけないのだ。思考に沈みそうになった頭を切り替えて、立ち上がる。ただ、生理的な涙だけは止めることができず、暫く流れるのに任せることにした。

涙で滲んだ視界が揺れる。水分が光を反射した朧げな景色は物語で語られる生と死の狭間にも似ている。歪む視界の先に彼の姿が見えないかと微かに期待をしたものの、虹色に揺らめく空間には誰の姿も見えないままだった。
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