セックスはできるだけさせたくないんだけどキャラを壊さないレベルで事務的にするかもしれません。肉体関係のみで愛がなくてすまない・・・
原作の独自解釈に次ぐ独自解釈



ようやく次の街に辿り着いて、まず行ったのはユリウスに単独行動をさせることだった。とにかく野菜とか果物とか喰いまくってこい、と言って金を渡すとユリウスはものすごく真剣な顔で頷いた。お互い真剣ではあるのだがどうも内容が引き締まらないのはどうしてだろうか。

「私が大食漢であったならよかったのだがね・・・」
「いや、まぁ、ほどほどにな?ほどほどに」

食い倒れとかしないでね、と言い含めてユリウスを送り出す。別に単独行動自体は周りのみんなも好き勝手にやってるので違和感はない。エキドナはこれを機にと露天を見て回っているし、エミリアはラムと一緒に買い物に行った。メィリィは特に出歩きたいとは思っていないらしく宿屋でごろごろしているのだろう。

「・・・・さて、俺はベア子の元へ行きますか・・・」

話があるかしら、と少々むくれた顔で起き抜けに言われては従うしかない。恐らくスバルとユリウスの秘密にも気づいているのだろう。見た目だけはロリな契約精霊にあんまり言いたいことではなかったというのもあるのだが、はてさて、許してもらえるだろうかと頭を掻きながらスバルは自らに与えられた宿の一室へと足を速めた。




「さて・・・ベティーに申し開きはあるかしら。スバル」
「全くございません」
「ベティーが呑気に寝ているだけだと思ったら大間違いなのよ。流石に契約者の体調が悪くなったり良くなったりを繰り返せば気づくかしら」
「はい・・・でも飯食って寝れば治るからいいかなって・・・」
「そういうことを言ってるんじゃないのよ!秘密にする理由がないとベティーは言っているかしら!」

むきー!とほっぺを真っ赤にして起こるベアトリスを可愛いなぁと思いながらスバルはベッドの上に正座をして頭を下げた。ごめん、と真摯に謝ると幾らか留飲もおさまったらしい。ため息をついて、考え込むようにベアトリスが腕を組む。

「誘精の加護にそうした副作用・・・と言うべき欠点があるのはベティーも知っている。文献で読んだことがあるかしら。最も、本当に数少ない事例ではあるのよ。例えば無礼を働いて契約精霊を怒らせたとか、本人がなんらかの事情で契約をしなかったとか、・・・そもそも暴食に食われた人間は時間が止まったようになってしまうはずだし、つくづく今回の事案は規格外かしら」
「・・・そうだよな。本来ならあり得ないことなんだろうし」
「なのよ。時にスバルは、加護とはどういったものであると捉えているのかしら」

ベアトリスの問いに、ふむ、と首を傾げる。死に戻りも加護と言えば加護のようなのかもしれないが、デメリットがありすぎた。しかし例えばラインハルトの持つ加護である「剣聖の加護」、テレシアが持っていた「死神の加護」、オットーの持つ「言霊の加護」など、それぞれ使い勝手の良し悪しはあるようだが基本的にメリットの方が大きいものではないかとスバルは考えている。

「・・・めっちゃ良いもの?」
「まぁ、そうした点も確かにあるのよ。でも実際は有用な加護なんて一握り、基本的には使いようのないもののほうが多いかしら」
「例えば?」
「ベティーが知っているものだと・・・塩と砂糖の理の加護とか・・・」
「えーと、それは間違わないようになる的な?」
「正解。持っていても毒にも薬にもならない加護なのよ」

特定の事例を除き、基本的には一人に一つしか授けられないものらしい加護がそんなものだとしたら。まず料理人にでもなるぐらいしか思いつかない。しかし目の前の粉が何であるかわかるとかではなく、塩と砂糖に限定されているのは逆に悪意でもあるのだろうかと思うレベルだ。

「となるとユリウスの加護にまつわるデメリットはまぁ、妥当か」
「寧ろ軽い方だと言っても良いかしら。精霊が惹かれるということは、必然的に持たざるものよりも契約は簡単にこなせる。それに余程のことがない限り契約が切れるなんてありえないのよ。精霊は心に嘘を付かない、だから契約者に一途かしら」

精霊術師が嘘を付かない理由はそこにある。純真なものには同じ純真さを持って接することが大切だ。自然の一部である精霊は邪な思いをすぐに見抜く。

「ちなみにベア子にはユリウスってどう感じられるの?」
「・・・何と例えればよいか今一よくわからんのよ。精霊独特の感覚なのだけど、どこか安心するかしら。羽根を休める止まり木にしたいような、自分が生まれた場所のような、そんな雰囲気で・・・」
「うん、全くわからん」

何をどうしたらそういう感想が生まれ出てくるのかさっぱりわからなかった。ぐぬぬと額に皺を寄せてどうにか感想を引きずり出そうとするベアトリスに向かって頷く。

「ま、ユリウスの野郎から溢れ出ているらしい実家のような安心感は置いといて。精気を効率よく吸収する方法について何か知恵やお考えなどはありますでしょうか・・・」
「残念ながら、概ねスバルが説明されたことと同じかしら」

どことなく予想はしていたが無慈悲な宣告だった。ですよねー、と乾いた笑いが漏れて、頬が微かに引き攣るのはどうしようもない。とはいえ、別の精霊と契約しろなんてことは口が裂けてもユリウスに言うべき言葉ではないのはわかっている。落ち込んだ様子のスバルに、あわあわとベアトリスが慌てて声をかける。

「わ、わからないのよ、スバル!たった一つで全回復するぐらい精気を含んでいる食べ物がこの世のどこかにあるかもしれないかしら!希望を捨てるんじゃないのよ!!」
「それ絶対伝説級の何かだよね!?仙豆的な!?・・・うん、まぁ、どうせ暴食をぶっ倒せば解決する話だし、回復できないわけでもない。そこまで悲観はしてねぇよ」

ただ、方法がアレなだけで。
とりあえず理解、というか契約精霊の許し?も出たことだし、と町のどこかにいるだろうユリウスを探そうとベッドから立ち上がる。夕飯までには戻ってくることを約束して、あまり気が進まないながらもドアノブに手をかけたところでベアトリスが思いだしたかのように声を上げた。

「あ、そういえば・・・性的興奮によって得られる精気の量も変わるという文献があったかしら」

予想外の、いや、ある意味予想できなくもなかった情報にがくっと体の力が抜ける。ほんとはあいつインキュバスだかサキュバスだかなんじゃないのかなんて失礼なことを思いながら、スバルはちょっと頬を染めたベアトリスの顔を見つめた。

「せ、せいてきこうふん」
「えーと・・・えっちな気分になることなのよ」
「いやわかってます!えぇ?ユリウスに性的興奮・・・?興奮・・・?どうやって・・・?」
「スバル、別に男で興奮しろとは言ってないかしら」
「それもそうだな」

最もなことを言われて微かに光明が見えた。しかし結局相手をするのは男なので、ここは視界を閉じて青少年の妄想と煩悩パワーで打ち勝つしかない。一応有益な情報を思い出してくれたベアトリスに礼を言ってからなんだかすでにもう気疲れしている体を引きずりながら青果店やら食事処やらを覗き込んでいく。

「お、いた・・・どう?回復できた?」
「ああスバル、・・・残念ながら今一つ、と言ったところだね」

数件目でリンガ片手に真剣に悩んでいる姿を発見して声を掛ける。スバルの問いに申し訳なさそうに眉を下げて、それでもそのリンガは購入することにしたらしい。ついでとばかりにスバルもいくつか果物を選んだ。まとめて買えば袋ももらえるし何よりちょこっと割引してくれる。

「んじゃ、そういう所、行くか」
「・・・・・・・すまない」
「だからいいってば。謝罪は暴食の野郎をぶん殴ってから受け取ることにしてやる」

甘い古紙の香りがする紙袋を腕に抱えて、ユリウスの腰付近を軽く肘でつつく。しかし物凄く身長差があるわけでもないのに明らかに胴の長さが違うのがわかってちょっと後悔した。
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