ユリウスの頭が回ってない





ドン!と壁に何かを叩きつけるような音が聞こえた気がして、スバルは男とアレコレする動きを止めて顔を上げた。なんか隣の部屋から聞こえてきた気がする。ドン!って。思いっきり拳で壁を殴ったような音が。

「ぅ、うう……んっ、はや、はやくぅ……動い、て、くれっ……!」
「ちょ、ちょいまち。なんか聞こえない?」
「しらないっ!そんなこと、どうでもいいからっ、ぅ、………あっ……」

そんな駄々をこねる最中で自分で中に入ったスバルを締め付けて男が勝手に自滅したのでこれ幸いと耳を澄ます。ただの気のせいだったのだろうか。隣人が足でもぶつけただけかな、と首を傾げつつ今度はスバルがゆっくり動いてやるとその一突き一突きを喜ぶように組み敷いた体が跳ねた。

「あっ、ァああっ…!」

喉を反らして喘ぐその声は不思議なことに全く気持ち悪いと思わない。もしかしてそっちの気もあったのかな、と不思議に思いつつ自分の快楽を追い求めて柔らかくて熱い肉の穴を使う。もう少しで出せる、と思って動きを早めた瞬間にまた鈍い音が聞こえてスバルはぴたりと動きを止めた。

「…………やっぱ聞こえるな」
「ん、……わたしには、何もきこえないから、……もっと………」
「うっぐ、……おいやめろこら」

聞きようによっては可愛らしいセリフを口にされて、完全に脳がピンク色かよと思った。正気に戻ったら恥ずかしいやつだ。きゅうきゅうと性器を締め付けられて、その刺激に喉奥から思わず唸り声が漏れる。

それでも律動を始めようとしないスバルに焦れたのか、音の真偽を確かめようと男も黙りこんだ。二人して耳を澄ますも、お互いの荒い息しか聞こえない。

「………きのせい、では?」
「ええー?でも確かに横から音したよ?」
「そこ……壁から?」
「うん。えーと、隣には……あー……」

スバルの部屋は角部屋だ。片方には何もなく、もう片方には誰かが借りているかもしれない部屋がある。特に何処に住民がいるかなんて意識したことはなかったが、そういえば、と思い当たることが無いわけではない。時々音楽や笑い声が聞こえる時があったような気がする。

「壁ドンか、これ」

つまりはセックスの音がうるさいと抗議を受けている。たまたま今日、隣人の寝相がめちゃくちゃ悪いとかでなければの話だが。

まさか自分がその当事者になるとは、と思うと思わず口角が引き攣った。その言葉自体を知らないのか首を傾げて男がほやほやとした口調で呟く。

「かべどん……どん?」
「それそれ」
「……何がたたいてる?」
「え、そりゃ……人間しかいないだろ。人間以外だったらホラーだよ」
「何故たたくんだ?」
「それ聞いちゃう?……多分その…………声がね、うるさかったんだと思います俺は……」
「こえ……」

もしや自分が大声で喘いでいる自覚がないのだろうか。不思議そうな雰囲気を漂わせている男にそれを告げるのは何だか酷な気がした。スバルだって恥ずかしいのだから、嬌声を聞かれた男はもっと恥ずかしくなるんじゃないだろうか。明らかに脳が回ってないのでそんな感情は持たないかもしれないけれど。

「あのね、…………一応尋ねるけどさ、俺が言いたいこと分かる?」
「わからない」
「わからないかぁ……そうかぁ………」

でもなんだか育ちがいい雰囲気があるし、隣の音が聞こえるような場所に住んだことがないのかもしれない。それが正解っぽいなぁと思いながら、首をひねって壁の方をぼんやりと見つめている様子を眺める。今度はスバルの方がなんだかむずむずしてきた。

「っひ、ぅっ……!」
「……………あ、この体勢って辛い?」
「んん………」



「そんならいいや、……別に血ぃ見てもいいからさ、俺の肩でも噛んでてよ」
「そんなこと、したら、いたいのでは……」
「じゃあ舐めてて」



はむはむ、と柔らかなものがスバルの首筋を刺激する。背中がゾワゾワするような微弱な快感がその場所から腰骨まで走って行って、自分の性器がどくりと脈を打ったのがわかった。

「うッ……く、………ぁー、やっべぇ……」

直接的ではない刺激がこんなに興奮するものだとは思っていなかった。
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