※捏造爆発
※過去話
















北の海に浮かぶ、学問に重きをおく島があった。



その島で一番栄えている国の首都のほぼ中心にその学園都市はあった。


その学園都市にはハイレベルな、あらゆる分野の学び舎があった。
そのため島一帯のエリート達が集結していた。


国の充実した補助制度で、何かに秀でている者なら貧しくともアパートから教科書までと、そこで学んで行くために必要な物資はなにからなにまでを与えられた。



その学園都市にそんな補助とはかなり縁遠いひとりの少年がいた。





おれね。

ほんとまじ縁遠かったよ。学園都市に住んでたっつっても学生街の飯屋だったし。学校は幼少学校中退だし。あっはっはっ!!

えーっと。
んー……………あ、


おれの親は腕のいい賞金稼ぎらしいのよ。いやまじほんと。

おれが生まれてすぐ飯屋のおっちゃんにおれを預けて海に出て行ったらしい。せわしないね。我が親ながら。おっちゃん曰わくおれが生まれてきたのはよかったんだんだけど、あいつら二人の遺伝子を持った奴が存在ちまったって思うと非常に微妙な気持ちになったんだと。
どんだけだよおれの親。

まっ、なんやかんやでおっちゃんに育てられて、14年後、立派な家業手伝いになりましたとさ。あ、料理は知ってると思うけどおれ壊滅的だから皿洗いと掃除担当な。
それらの担当が暇なときはおれは客とガラス向こうの通りをやつを観察すんのが楽しみだった。
それで、プクク…!昼時にいつも窓際の奥から3番目のテーブルに座るイケメンの常連さんがいたんだけどよ、そいつ必ずポテトサラダ頼むんだよ。単品で。つかポテトサラダしか食べない。月火水木金オールウェイズポテトサラダ。
おれは密かにその人のことをポテトって呼んでた。髪もちょうど黄色っぽかったし。
ポテトはポテトサラダを頼むとポテトサラダがくるまで人を殴るのも難しそうなくらい分厚い本を読んでた。ポテトサラダがくるとポテトサラダをたべながらまた分厚い本読んでポテトサラダをたべおわるとまた分厚い本よんで、みたいな。今ポテトポテト言い過ぎよねおれ。




話それすぎだよな。



えーっと…


そう。




俺には憧れてる兄ちゃんがいたんだ。おれんちがある学生街を見下ろすようなかんじの丘の上の高級住宅地に住んでるらしかった。
らしかったってのは、あ、うちの店の前にちょうどバス停があってその人はいつもその高級住宅地行きのバスに乗っていたって訳。


うちの前のバス停から乗るんだったらきっとすぐ近くにある上級学校生かなって思ってた。


なんでその兄ちゃんのことが気になったかっていうと、その人がバス停に並ぶといつも遠巻きに黄色い声と羨望の眼差しがあったから。

確かにその人はイケメンなんだけどさ、なんていうか…度が違ったんだよね。普通のイケメンのそれとは。

気になって、その人のことを店の客に聞いたらびびった。超有名人だったらしい。新しい医術の可能性発見〜新種のワクチン〜天才上級学校生〜なんちゃら賞やらなんやらとりまくってたらしく、デカデカとそんな記事が載ってる新聞を客に見せられた。いやぁまじほんとびびったー。まじすごい。だって北の海中の有能ブレインが集まってるこの国で賞とりまくりよ?ヤバいよね。なんでおれ知らなかったんだろうね。なんで知らないんだって客に引かれたよね。

俺はその人のそれを聞いた瞬間ブワってなにかがこみあげてきたんだ。



おれは学生街の飯屋の居候。幼少学校中退で夜な夜な喧嘩ばっかやってるチンピラ。

片やあの人は高級住宅街に住んでるイケメンで上級学校生。所謂エリート。





全く違うあの人とおれ。



そんな二人が組んだら、どんなことにあるのかなとか、思ったりして…って、


きゃああああ!!!!!なにこれ恥ず!!!!!!過去とか話すの恥ずかしいわん!!!!!!!!





ゴホッ



とにかくおれはその人と話してみたい、仲良くなりたいって思った。


バス停に並んでいるところで声をかけるのが一番早そうだったけどあんな熱い視線を送る遠巻きを無視して『よっ!』って声をかけるメンタル力がそのときの俺にはまだなかった。…今は普通に話しかけれるよ。多分。…鍛えられて…ますから……。(ボソッ)




とりあえずおれは窓からあの人を観察しようとおもった。
そいで機会があればすぐに話しかけに表にでようと心に決めた。

せっかく観察するんだからおっちゃんにあの人のことを色々報告してたんだけど三週間目にしてキレられた。


「お前が!!!!!トラファルガーを!!!!!!いたく!!!!!お気にいってるのは!!!わかったから!!!少し黙れよ?!!!!!!」


「ちょ、話最後まで聞いてって!!―――で、トラファルガーさん、またなんか新しいウィルス発表したんだって!!!!よく知らんけど!!!!でもだよ、それなのによ?!!!!いつもと同じ、この世はつまらねぇな的な顔してるんだよ!!!なぁ、ちょーやばくない?!!なかなかできないよあんなの!!!!!はああああああああかっこよすぎて俺もう倒れそう!!!うはあぁああ俺も大学行ってあの人と同じ空間で息してぇええ!!!!」(バンバン)

「…俺にはスカしたヤローへの悪口にしか聞こえんのだが。…(同じ空気を吸いたい…?)それにそんな不純な理由で大学なんか行かすか!!!!」


「補助制度があるじゃないですか」(キリッ)


「あれは優秀な人間にしか適応しないんじゃボォォオケ。お前、年少学校すらまともに行かんかったろうが!」


「じゃあさじゃあさぁ!どうしたらあの人に近づけると思う?」


「そーだな…。それよりトラファルガートラファルガーうるせぇが、なんでそこまで気にしてんだ?」


「んー…なんつーか、あれなんだよ。あれ!あの人って俺とすべてにおいて真逆じゃん?だから、あの人と俺が組んだら最強なんじゃね?みたいな?運命を感じる?」


「はあ…。いやいやいや」


「なにさ?」


「ボケが考えることはわからん。」


「えぇえ?そお?」(ニコニコ)


「……………お前、トラファルガーのこと何で知った?」


「…風評?」


「じゃあお前も有名になるようなことでもしてあのガキの耳に届かせるんだな」


「…」


「そしたら案外向こうからお前に会いに来るかもしれねえぞ?…お前のいう運命っていうやつならな」


「おっちゃん…」


「…んだ。礼なんていらねぇよ」


「俺、いまから喧嘩してくる」








「ーーーーーーーーーは?」


「風評流してくる。有名になる」


「ちょっと待ておい…」


「こうなったらとことんあの人とは違うのことして、目立ってやらあああ!!!!ありがとうおっちゃん!!!!」


「まちやがれ!!!!!」


ダダダダダダダダダダ


「ボォォオオオオオオオオオオオオオオオケ!!!!!!!」



バタンッ









なんで喧嘩で有名になろうとおもったというとおれ一回も負けたことなかったからかな。うん。

ちょっとカッコつけたサングラスかけたら喧嘩をふっかけられるふっかけられる。おれぱっと見弱そうらしいから余計に。あははは。ま、とにかくおれは売られた喧嘩を買いまくった。そしたらよその国の奴らやら山賊やらにも目ぇつけられたらよね。笑けた。最終的には海賊まで俺に挑んできて、白髭傘下の奴をを伸したら『フォエールキラー』って意味の『シャチ』っていう通り名がついた。笑けた。



「おっちゃん、おれ『シャチ』って呼ばれてるんだー」


「ははは…さすが、あの二人の息子だよ。…でも、シャチってお前、そんなに可愛くないだろ…シャチって……プクク…ブッッフォ!」



普段あまり笑わないおっちゃんを噴かせる俺の通り名ってなんだよ。



なんやかんやでおれはその筋じゃあちょっとした有名人になった。





そんで、おれが暴れ出して一年くらいのそんなある日よ。


























あの人が!!!!!店に!!!!!!入ってきたんだよ!!!!!!!!





その人が視界に入ったとき、皿を5枚パーンしたよ。恋する乙女並みに挙動不審。嬉しすぎて足が震えた。












おれに会いに来た







おれが喧嘩が強いっていう噂をきいて、シャチって名前って名前を知って、おれに、興味をもって、来てくれたんだ!!!!!!おれはここまでの思考を一秒もかからずにして、なんて声かけよう。どういうかんじで…ッ










「よお」



その人は手を上げて挨拶した。







おれは一瞬上げかけた右手を慌てて、何事もなかったように、そのまま静止した。







その人はおれをみてなかった。










おれを通り越したそのまた向こう――


















窓際の奥から3番目のテーブルに向かってその人は歩く。




――おれとすれ違う。









そして








「遅い」







このぶっきらぼうな声は、あの声だ。









『ポテトサラダ。単品で』










―――――ポテト?







――――ポテトとあの人は…知り合い?







ひゅって変な声がでた。馬鹿かおれは。何が風評だ。シャチってなんだ。エリートなあの人が、チンピラの喧嘩なんか興味なんて示すはずがないってなんで、考えればわかることなのに。なのに、勝手におれに会いに来た、とか、舞い上がってよ。
いつもひとりでいると思ってた。みんなからあんなに遠巻きにされて、仲間なんていないと思ってた。――あの人と仲間になれるのは俺だけだと思ってたのに、
なんだよいるんじゃねぇか仲間。
足がさっきとは違う感情で震える。止まらない。頬が熱い。なんだこれなんだおれなんだおれなんだ、おれ!!!――目も熱くなってきた。―恥ずかしい。


恥ずかしい! ! ! !







「ここのポテトサラダうまいっスよ」


「そうか。じゃあスパゲティで」


「…じゃあって…おれスパゲティっていってないんスけど」


「味オンチのお前が薦めるメニューなんか食えるか」



あー…仲良さげ。

はやく注文聞いてこっから逃げたい河原走りてええええ!!!!!!!!!





「すみません」




ポテト…なんなんだお前は…。ポテトサラダド変態のくせに…




「……お決まりですか?」


なんでおれ敬語使ってんだよ。

「あー。えーっと…」


はやくいえよポテト。


「ポテトサラダ、単品とスパゲティ…」


「やっぱオムライス」


「…先輩注文する前にいってくださいよ…。ごめん、スパゲティやめてオムライス」

先輩…?ってことはポテト、後輩かー。いいよねー学校。楽しいでちゅかー。おれは毎日喧嘩三ま…いや、今日からそれもなしか。はは…

「オムライスっスね。ちょっと待っててくださ」「後、コーヒー3つ」



「はい。コーヒー3…」



3……?











「お前が、島で一番強いって噂の『シャチ』ってやつ?」










「毎日おれのことガン見してきやがって…いつか喧嘩ふっかけてくるかと思ってたぜ」



「先輩、こいつ売られた喧嘩しかしないらしいっスよ」



「へー…」



「…つかあんただったんだな『シャチ』って。サングラスしてるって聞いてたからわからなかった。…ほぼ毎日来てたのになー。なんか悔しい」













「…俺のことは知ってんな?…お前の喧嘩強さを見込んで、だ。お前、俺と来ないか?」








コーヒー飲みながら、まぁ話そうぜ。





そういっておれに笑いかけた。
あんなにつまらなそうな顔をしていたなんて思わせないくらいに、かっこよく。





なにがあったかは知らないけど、とにかく、もう










おれは死んでもいいと思った。





















昔話でもしようか。




























そしたら案外向こうからお前に会いに来るかもしれねえぞ?






















…お前のいう運命っていうやつならな





















横井さんリクエストの「ハートの誰かの過去話」でした。






20111130 シャチの誕生日(捏造)

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