他愛もない話をしながら、さっき作ったばかりの朝ご飯をテーブルを二人で囲んで食べる。

トーストにスクランブルエッグ、ウインナーに少量のサラダ。

そしてヨーグルト。

どこの一般家庭でも目にする朝ご飯の定番だ。


「そういえば、今日何時に帰ってくるの?」

「夕飯までには帰る」

「夕飯何が食べたい?」

「肉」

「また肉ー?」

「じゃあ、ハンバーグ」


結局、肉系の料理が食べたいという大輝に少しばかりため息が溢れるが、これも嬉しかったりする。

同居を始めてから一年弱、大輝は一人の時はあまり外食をしない。

この前、仕事で遅くなった時だって家でご飯を食べていた。


ご飯は一人で食べるより、二人で食べるほうが美味しい。

それが誰かの為に作ったご飯だったら尚更だ。

お世辞でも「美味い」と言われれば、素直に嬉しい。

自然とつり上がってくる口角を抑えようとしてみたが、どうやら無理なようだ。

ニコニコとしている顔で大輝を見れば、大輝は私の視線に気づいたのか私の方を見る。


「何か俺の顔に付いてるか?」

「うん、目と鼻と口と眉毛が付いてる」

「…当たり前だろ」


呆れたように言う大輝。

何でもないただの会話に幸せだなーなんて思って、残りの一欠片となったトーストを口の中に放り込んでハッとした。

今の時刻は8時半。

確か今日は大輝が旧友とバスケをすると言っていた。

駅前に9時に集合とか何とか言ってなかったっけ?

当の本人を見てみるも、大輝は何食わぬ顔でヨーグルトを食べていた。


「ちょ、大輝、もう8時半!そろそろ準備して行かないと間に合わないよ!」

「あー、まぁちょっとぐらい大丈夫だろ」

「全然大丈夫じゃない!!」


空になったお皿を集め、流し台へと持っていく。

座っている大輝の手を引いて洗面所に連れて行き、置いてあった大輝のハブラシを持たせる。


「洗濯物干してくるから、その間に歯磨きと着替え済ませておいてね」

「んー」


曖昧な返事を返した大輝を尻目に、洗濯物を干しに行った。

ベランダを開けると、とてつもなく寒かった。

これで暖房を付けていたらと思うとゾッとする。

きっと寒すぎて洗濯物を干すどころではないだろう。


手早く洗濯物を干して部屋に入ると、大輝の着替えが終わっているようだった。


「もうそろそろ行く?」

「あぁ、もう出てく」

「お弁当」

「もう持ってる」


そう言って大輝は私が早起きして作ったお弁当を持ち上げて見せた。


「じゃあ、見送るね」

「ん」


どちらからでもなく手を繋いで、玄関に向かう。


「帰ってくる前に連絡してね」

「多分な」


きっと忘れるんだろうなぁと思いつつ、ドアノブに手を掛けた大輝の後ろ姿を見つめる。


「あ…」


扉を一回開けた大輝だったが、何かを思い出したように振り返った。


「どうしたの?」

「忘れもん」

「忘れ物?ってわっ!」


いきなり後ろ首を鷲掴みにされ、大輝の方へと引き寄せられた。

そして流れるままにキス。

いきなりの事で目を真ん丸にして驚いていると大輝がしてやったり顔で私を見た。


「いってくる」

「…いってらっしゃい」


ニヤリと最後に私を見てきた大輝にイラっとしながらも、様になっていてカッコイイなと思った。

2012.12.1



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -