放課後レッスン(1/5)


──初めはただからかうだけのつもりだった。



「お前ってさ、童貞だろ?」

「………え……、なっ…!!?」


テストの結果が見事にオール赤点だった俺に追試に向けて放課後勉強を教えるようセンセーがあてがったのがこの男、間宮だ。


「あー、そのリアクションは童貞だな。100パー童貞」

「そっ、そっ!ちがっ…急に何を言って……っ!」


分厚い眼鏡、『目や耳にかからないよう』っていう校則に従って綺麗にカットしてる黒髪。制服は第一ボタンまでしっかりとめてネクタイも息苦しそうなくらい丁寧にしめられている。

そんでその見た目通りに成績は常に学年トップ。とにかく真面目で友達は少なそうだけど大人たちからの信頼は厚い。

今時こんなのがいるのかと逆に関心するほどの堅物優等生だ。


「違うって? じゃーしたことあんの? セックス」

「……っ!!」


セックス、という単語を聞いた途端、赤かった間宮の顔がますます赤くなった。

…ほんと、漫画の真面目キャラみたいな奴だなコイツ。


女からの誘いがあったのに強制的に学校に軟禁されて何も面白くもない勉強を延々と叩き込まれて今にも爆発しそうだった俺は、思っていた以上に間宮の反応がおかしくて『そうだ。このまま間宮をからかいまくってストレスを発散しよう』と即座に思い立った。


「やっぱ経験ないんじゃん。つーかキスすらしたことねぇだろ?」

「そっ…そんな不純なことはっ、学生には必要ないだろう!」

「あっはははは!不純って!何時代の人間だっつーの! 何?間宮はそういうことしたいって思わねぇの?」

「……思わない!」

「マジで? 好きな女子とかいねーの?」

「………っ」


顔を真っ赤にさせたまま目線をそらす間宮。

……あぁ、これはいるな。多分この学校に好きな女が。


「ははは!なんだ、好きな奴いんじゃん!誰?誰?同じ生徒会の子とか?」

「…っうるさい!そんなことどうだっていいだろう!早くその問題用紙を……」

「どーでもよくねぇよ。学年一のガリベンのそういうことってすげー興味あんだけど」


俺は目の前に座っている間宮の眼鏡に手をかける。


「なっ…にを…っ」

「間宮ってさ、眼鏡外したら意外とイケメンなんじゃね?」


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