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ピンク色の髪の毛は相変わらず落ち着きのないまま、ひらひらと風に靡く。それを横目でちらりと見る。
「…、何だヨ」
「別に」
真っ暗な中、草むらに寝転がって、ぼーっとしている暇人は俺たちぐらいだ。よい子は帰って寝てる時間だろう。一人で座っていたチャイナを見かけて、俺まで何故だかついつい隣に座り込んでしまった。
「眠いアル」
「じゃあ帰りなせェ、送っていってやるから」
「…今、姉御来てるもん」
ご苦労なこった。旦那と姐さんに気を使うたぁ。くああとあくびをする。
「あーあ…星に触れたらいいのに」
「火傷するぜ」
「ロマンチックのかけらもないアル」
これだからサドは、と文句をたれながら、チャイナはそっと右手を空にかざした。細い指の隙間から星が見え隠れする。
俺も真似をして、そっと左手をかざした。そうだな、どうして人間は空に届かないんだろう。どうして星に触れないんだろう。
不意にチャイナの右手の小指と俺の左手の小指が触れた。指先の熱が伝わる。そっと触れて離れると、風が指の間をすり抜けていく。なんだかそれが寂しいような気がして、そっと俺の小指と、チャイナの細い小指を絡めた。ぴくり、と指が跳ねる、隣に寝そべっているチャイナの顔が心なしか赤いような気がしたけど、暗闇のせいではっきりとわからなかった。
「…ふん」
「何でィ」
「今日は特別ネ」
星が瞬き、夜が明け、朝が来るまで、もう少し時間があるから。あと少しだけ、星空に包まれていたいと思った。


120407/手のひらのUniverse