※※第347話:Make Love(&Public sex).5







 「貴方は常に主観的でしか物事を考えられないから、無意識のうちに弟さんを傷つけるんですよ!冷たくされて当たり前、嫌われて当然です!それに対して文句を言うなど言語道断!」
 久しぶりにキレた醐留権先生の喝は圧倒的で、もちろん自分の兄に対しても言いたい台詞だった。
 なのに自分の兄相手だとなかなかキレられないのは、なぜだろう、血の情けとでも言うべきなのだろうか。


 「……綾瀬先生、貴方は十中八九、サイコパスです……いや、サイコパス以外の何者でもありません。」
 「えっ!?サイコパスって、ホラー映画とかに出て来るあの、サイコパス!?」
 「そうですね。」
 「ええええええ!?」
 急に声のトーンを抑えた醐留権先生はきっぱりと、綾瀬兄をサイコパス認定した。
 ホラー映画に対する恐怖とか、幽霊に対する恐怖とかをしっかり感じることのできる綾瀬先生は、弟への愛が独りよがりだったせいで社会に於いてのサイコパス認定を早々にされてしまった。
 偶然にも聞いてしまった周りの先生方は、醐留権先生の言葉に説得力がありすぎて、本気で綾瀬先生はサイコパスなのだと思い込む。

 とりあえずサイコパスについては、誰か一人でもきちんと検索して特徴を調べたほうがいい。




 「僕、サイコパスなんですか!?」
 「自覚がないからこその、サイコパスですよ。では、私は授業がありますので。」
 「待って、醐留権先生、もう一回診断して!」
 「何度診断しても同じです、綾瀬先生はサイコパスです。」
 「そんなーっ!」
 ホラー映画では凶悪な殺人犯として描かれるのがサイコパスなので、認めたくない綾瀬兄は泣いて醐留権に別の診断結果を頼み込んだが却下された。
 ここは学校であって、病院ではありません。
 そんなに不安ならネットでいくらでも仮診断をしてくれる時代ですよ。

 ゾーラ先生は最初こそ十中八九と表現したものの、あまりにも鬱陶しかったため最終的にサイコパスだと断言した。
 お兄ちゃんはやるせないけれど、サイコパスだとなれば弟は数ヨクトメートルくらいの興味を示してくれるかもしれない、ホラー大好きだから。



 踏んづけてやりたい気持ちを抑え込み(綾瀬兄は踏んづけられると悦ぶ性分)、醐留権は颯爽と職員室をあとにした。
 なぜだろうか、サイコパスにあれだけの説教を食らわした後でも、サイコパスの餌食になりそうな予感は微塵も感じられない立ち振舞いだった。
 反対に、サイコパスと言われてしまった綾瀬兄は自分が恐くて、ガクガクブルブルしている。



 「どうしよう……醐留権先生、……好きになっちゃいそう……」
 たまたま職員室を覗いていた萌ぴょんは、醐留権が一樹んのためを思って説教してくれたかのような錯覚に陥り、キュンキュンしていた。
 相関図がややこしくなるから醐留権先生はあくまでも人として好きであってくれ。

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