※※第328話:Make Love(&Adorable).199
「……閉めるぞ?」
「もう!?」
無下に扱いに来た薔はお構いなしに、ドアを閉めようとした。
このとき、対応の早さというか雑さに驚いた屡薇はとっさに、薔の肩を掴んでいた。
「おい、離せ。」
「薔ちゃんの肌すごおおお!てことで、触らせてもらったお礼にせめてスイカ受け取って!」
「お前が食えっつってんだろ?」
と、こんなふうに、二人の美形男子が揉めていると……、
「屡薇くん、ごめん。薔さんとこ高校生だからこんな時間に訪ねたら非常識だよね?」
屡薇をスイカのお裾分けに向かわせた張本人、真依が隣からひょこっと顔を出した。
この物語の腐女子たちは、日常的に美味しいシーンに出くわせることが度々あります。
ふたりを目にした真依はただちに、ドアを閉めた。
どう考えても、屡薇が無理矢理に剥いてしまった後だった、ラップでぐるぐる巻きにされたスイカを手にしていようとも。
「お邪魔しました!」
「えっ!?ちょっと、真依さん!?」
こうして屡薇は、ラップでぐるぐる巻きにされたスイカを手にしたまま、廊下に閉め出されることになった。
肩から手を離された薔も即座に、ドアを閉めたので。
真依はさすがにナナに遠慮して、薔を凝視したりとかはできなかった、その代わり彼氏を閉め出した。
「頼むからこけしさんに報告とかしないで!」
また変な親睦が深まりそうで危惧している屡薇は、自宅のインターホンを連打する。
そして思った、ラップでぐるぐる巻きにされているスイカはあんまり美味しそうではないと。
これなら受け取ってもらえなくて、当然だと。
部屋に戻った薔はシャワーの前に、毒消しも兼ねてまたナナを抱いたのだと思われます。
スイカもたまには色んなことを、もたらすのです。
――――――――…
(どうしてあたしはずっと、一樹んのことを考えてるんだろう……)
なかなか寝付けず、萌は悩んでいた。
最近、綾瀬のことが気になりすぎてよく眠れていないのだ。
しかも、次の月曜日には綾瀬のアパートで、『ホラー映画大会』なるものを開催することになっている。
ひたすらふたりがお気に入りのホラー映画を上映する大会なのだが、ホラー映画に集中できる自信がまったくない。
ホラー映画は大好きなのに、綾瀬に会えることばかり気になってしまう。
(やっぱり手作りクッション大会とかのほうが……)
綾瀬のお気に入りのホラー映画に対して感想を言えないのではないかと悩みに悩んだ萌は、大会の名目を変えてもらうべくLINEを送ろうとした。
すると手に取ったスマホが、LINEのメッセージが届きましたよという通知音を鳴らした。
「ひいいいっ…!」
送り主が綾瀬だったため萌は奇声を上げているのだが、暗がりの中でぼんやりと光を放つスマホに照らされた萌もなかなかのものである。
恐る恐る、震えてしまう手でメッセージを開くと、綾瀬から送られてきた内容は以下の通りだった。
“萌ぴょんタスケテぼく頃サレru”
“殺”は“頃”と打ち間違えております、これのもう一歩くらい間違えた文章を怪文書と言います。
※この物語のジャンルは、ホラーではありません。
…――What happened to him?
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