※※第324話:Make Love(&Doting).196







 あなたが彼女じゃないの?という疑問を真依が抱いたのは、さておき。


 「えええ……?何その羨ましすぎるポジション……呪いたいくらい羨ましいんですけど……」
 脳内で相関図を思い描いた萌の雰囲気はたちまち、ホラーになった。
 ゾンビTシャツも俄然、映えてくる。

 「ダメだよ、萌ぴょん、高良先輩のおかげで僕たちは出逢えたんだから、むしろ感謝しないと!呪うのは僕の兄さんだけでじゅうぶんだよ!」
 「そっかあ、それもそうだよね!」
 笑顔でなだめている綾瀬のなだめ方も、なんか怖い。



 (屡薇くんが言ってた通りだった……!)
 二人はやはり似た者同士だったようで、合点がいった真依は一樹んと萌ぴょんを外に摘まみ出したくなった。
 女子会のようなテンションでいておきながら、ちょいちょいホラーテイストを挟んでくる辺りが酷似しており、その点を共通して持ち合わせているためかふたりは非常に楽しそうにしている。

 そもそも、出逢って三日目にしてそんな砕けたあだ名で呼びあいイチャイチャするくらいなら付き合ってしまえ!と思った。



 「ところで、どんな髪型にしたいのか決まった?萌ぴょん。」
 「それが、まだ決まってなくて……いっそのこと切らずに伸ばし続けようかなって思っちゃうくらい……」
 ここは美容室なので、萌はただ友人に会いに来てはしゃぐだけという営業妨害もどきを目的として訪れたわけではなく、きちんと髪を切りに来たようだ。
 綾瀬は友人を隅っこの席へと案内しながら、自分は見習いでまだカットはできないため店長さんに助け船を求める視線を送っている。

 捨てられた子犬のようで放っておけなかった店長さんは思った、そんなに仲良しならどうしてカットモデルを依頼しなかったんだ一樹んよ……と。




 「そうだ、いいこと思いついたよ、萌ぴょん!」
 「なになに?一樹ん!」
 クロスを掛ける前に、名案を思いついた綾瀬は萌に提案してみた。

 「薔さまに憧れてるなら、薔さまの彼女さんと同じ髪型にしてみたらどうかな!?」

 と。
 否応なしにやりとりが聞こえてくる真依は足元目掛けて、鋏を落としそうになる。




 「あたしに……三咲先輩の髪型が似合うと思う……?」
 またしても雰囲気がホラーになった萌はじっとりとした視線で、鏡越しに綾瀬を見た。
 似合うとかそれ以前の問題で、ナナの髪型のぱくりは色んな意味で危険すぎるし無謀すぎる。

 すると、萌につられてホラーになることもなく、彼女の髪をゆびでちょっとだけ摘まんだ綾瀬はにっこりと笑って言った。

 「うん、似合うと思うよ?だって萌ぴょん可愛いもん!」

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