※※第314話:Make Love(&Make Love!).21
「それにしても、すごいですねーっ!さすがはご主人さま!よく隣がこけしちゃんたちだとおわかりになりましたね!」
感心ひとしきりのナナは美味しそうに、彼が綺麗に殻を剥いてくれた蟹を食べていた。
「まあ、遠ざかったはずの悪寒が真隣に来たからな、嫌でも気づく。」
「はいっ?」
ややご機嫌ななめで返した薔は新たな蟹を剥き、ナナはキョトンとした。
「?」
「……悪寒?」
一緒に高級蟹づくしを夕食として囲んでいるこけしちゃんとゾーラ先生には、まったくの意味不明だった。
とは言え悪寒の元凶はまさにこけしちゃんで、ゾーラ先生も知らないうちに関与させられてはいる。
いつから悪寒の正体に気づいていたのやら。
「それよりおまえ、今はご主人様やめろっつったろ?」
「ああ!すみません、うっかりしてしまいました!」
彼女を戒めた薔はまた綺麗に剥けた蟹を手渡し、真っ赤になって慌てたナナは蟹を食べて無口になろうと試みる。
「美味しいです〜!」
でも特に無口にはならなかった。
はしゃぐ姿が可愛すぎて見せたくない薔は度々、目の前に座っている眼鏡のレンズに蟹を突き刺したくなっている。
醐留権は時折(悪寒とはこれのことか?)という殺気を感じ、こけしちゃんはもうこの対面が萌えすぎていてたまらない。
蟹を食べていても今のところ、誰も無口になっていない。
ナナは彼をうっかりご主人様と呼んでしまうわりには、ずっと蟹を剥いてもらっているばかりだった。
ちなみにこの夕食会、薔は断固として反対だったが彼女にどうしてもと可愛くお願いされて渋々お許しを出した。
おかげでお仕置きが確定となり、部屋に戻った暁にはナナは完膚なきまでに可愛がられることだろう。
「しかし暮中、君は綺麗に剥くな……」
蟹をあまり剥いた経験がない醐留権は華麗な手捌きを見習わせてもらおうと、眼鏡を凝らした。
「見んじゃねぇよ、突き刺すぞ?」
「蟹をか!?担任を蟹で突き刺すのか!?」
悪寒のこともあり話しかけられたくない薔の雰囲気はそら険しくなり、担任教師に向かって相変わらず険しすぎる態度を取られ醐留権先生はちょっとやるせなくなる。
(あぁぁぁ、相変わらず仲良すぎぃぃぃ……あと会話が卑猥ぃぃぃ……)
腐の禁断症状が緩和されてゆくにつれて萌えに萌えまくるこけしちゃんは、蟹をか!?のくだりは脳内でなかったことにした(彼氏の台詞なのに)。
どちらかと言うとこちらのカップルは、こけしちゃんのほうがスムーズに蟹を剥けている。
じつに、和みムードだった。
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