※※第302話:Make Love(&Forcefully).183
















 真実とは、探求しても、特に美しいものではない。
 しかも、見つけようとすればするほど手を焼かせる、とても厄介なものともなりうる。
















 ナナと薔は、もはや夏じゃなくてもデートの定番となりつつある映画ザザえもん鑑賞に来ていた。
 最大の目的は“ふたりの時間を楽しむため”なので、ドリンクを買ってポップコーンもナナが欲しがったので買って、ちゃっかりカップルシートを陣取っていた。
 目的はぞんぶんに果たせていると思われる。




 そして、今回のふたりが観に来ている作品のタイトルは、

 『映画ザザえもん ピノ太とララランドで二人の愛ランド』

 だった。
 色々と申し訳ない形で韻を踏んだタイトルになってしまいましたが、これまでのザザえもんの世界観とは一風変わってミュージカル調になっていた。

 ロマンス映画っぽくもあり、ザザえもんにロマンスが求められているかはやはり謎である。



 (かっ、感動っ…!)
 しかしながら、ナナは感涙に噎せていた。
 シャイアン役の声優さんが、美声だったからだ(もともとシャイアンは歌が上手い設定)。

 途中、さりげなくハンカチを手渡されたときは否応なしにドキッとしてしまった。
 ふたりの時間を楽しめている証拠です。
 泣くとお腹が空くため、キャラメル味のポップコーンはほとんどナナが食べております。

 彼女の様子が可愛すぎるので何もかも良しとしている薔だったが、映画の内容はカオス過ぎて若干呆れていた。
 テレビアニメを毎週観ている皆さんが観に来てもカオス過ぎてあまり楽しめるような内容ではなく、感涙に噎せているのは劇場内でただ一人ナナだけとなっている。



 『あの日あの時あの場所〜で、ピノ太くんに苛められなかったら〜。』
 『僕に苛められるの好きじゃん、ザザえもん。あと歌唱力はたぶん二点くらいだよ。』
 しかも、ピノ太くんだけはいっさいミュージカルに参加していなかった。
 キャラのイメージを壊したくなかったからなのか、それが圧倒的な不調和を生み出し映画はますますカオスとなっていた。


 (そうそう!ザザえもんはピノ太くんさんに苛められるのが大好きなのに!)
 と、心でピノ太くんに賛同したナナは、もっと自分の身に置き換えて考えたほうがいい場面でもある。

 にしても、およそ二時間耐えなければならない観客の多さが半端ない。
 ちなみに物語はザザえもんとピノ太くんの余韻のある別れで終わるようなこともなく、そこはどことなく二人の愛ランドだった。
 チケット代を払って鑑賞に来ている皆さんは、やるせなかった。

[ 477/539 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る