※※第288話:Make Love(&Melting).176








 「……なるほどぉぉ。確かにぃ、本気なのか冗談なのかぁ、わからないプロポーズですよねぇぇ……これだからヘタレはぁぁ……」
 こけしちゃんはしみじみと、フルーツアイスティーを飲んだ。
 「ですよね、まったく、これだからヘタレは……」
 おっとり口調についてはつられることもなく、真依も同じものを飲んだ。
 屡薇がもしもこの場にいたら泣くと思われる。

 腐的なトークで盛り上がるはずが、乙女たちはさっそく例のプロポーズの件について話しあっていた。


 「いっそのことぉ、真依さぁんから本気の逆プロポーズをするぅというのはぁぁ?」
 「えっ!?それは無理です、無理っ!あたし、本気のやつを屡薇くんからしてもらいたいんです!」
 「うぅんぅぅ、なるほどぉぉ……」
 つまりプロポーズ自体はしてもらいたいんだなぁぁ……と、肝心要の部分を聞き出せたこけしちゃんは、ニコニコしながら眉間にしわを寄せる。
 屡薇がもしもこの場にいたら喜び勇んでさっそく行動に移すと思われる。


 「最近、プロポーズの予行演習を薔さんにしてくれてたらなって……思っちゃうんです。」
 「それは仕方なしぃぃ。」
 真依は照れたように明かし、こけしちゃんはうんうんぅぅと頷いた。
 この、真依の台詞には大いなる変化が隠されていた。

 以前は平気で唯一許せる浮気相手と認定できた薔のことを、あくまでプロポーズの“予行演習”相手として考えられていた。
 予行演習が行き過ぎた場合の妄想も、ちゃっかりしてはおりますけれど。





 「ところでぇ、真依さぁん……」
 「なんですか?先輩……」
 ほのかにあちらの世界へと羽ばたきかけた乙女たちだが、急にこけしちゃんは声を潜め始めた。
 このときはつられて、真依も声を潜めた。

 「ストーカーがいるみたいなんですけどぉ、心当たりありますぅぅ?大人しそうで地味ぃぃな雰囲気でぇ、長い前髪で隠れてるからパッと見わからないんですがぁ、なかなかのイケメンですぅぅ。あとイメージではぁ、どちらかと言うと攻めぇぇ。」
 やや身を乗り出したこけしちゃんは、奥のほうの席をチラリィと確認してから真依に問いかけた。
 「えっ…!?」
 驚いた真依は、大先輩の見たほうを振り向くことができない。
 なぜなら、心当たりがありすぎるからだ。



 じつはこけしちゃんは、待ち合わせをした場所からカフェに来るまで、そしてカフェに入店してからもずっと、真依のことを見張っている男の存在に気がついていた。
 途中、その長い前髪を掴んで背負い投げをしてやりたいぃと思ったくらいだった。










 (高良先輩が休日に会っているのが女の子で、ほんと良かった。会話ぜんぜん聞こえてこないけど。)
 とうとう真依と同じ日に休みが取れるよう休日の申請を出すまでになった綾瀬は、ルンルン気分でフルーツアイスティーを飲んだ。
 とぉっても強い女の子に気づかれてしまったとは、知る由もなく。

 だがしかし、こけし姉さん基準で攻守のイメージをしてもらえている時点で、綾瀬くんはイケメンとして却下されてはいない。
















  …――Is there a stack of problems?

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