※※第285話:Make Love(&Aphrodisiacal).174







 「いちいち可愛すぎだ…」
 求められぞくぞくした薔は腰を浮かせた体勢にして、動きをしなやかに速める。
 「んんっ…あああ――――――――…っ!」
 戦慄いたナナはまたしても絶頂を得て、つまさきまで痙攣させた。
 体勢からして、動いているところが見えてしまうのが恥ずかしくて愛欲は次々と誘い出される。



 パンパンパンッッパンッ――…!

 「あ…っ、らめ…っ、イくっ、イっちゃ…っ、イっちゃうっ…っ、あ…あっあっ…ああんっ、」
 またイけてしまいそうなナナはひたすらに甘えた声で訴えた。
 ダメだとはこれっぽっちも思っていないのに、容赦なく迫り来る快感に我を忘れている。
 「イくな、とは一言も言ってねぇだろ?イけよ……」
 微塵も躊躇うことなく突き上げて、彼女の顎を掴んだ薔はキスを落とした。

 「今度は俺も一緒にイってやるから……」

 くちびるが触れあう直前に吹き掛けられた囁きが、妖美に心を蝕む。





 「んっ…んっんっはっんっ、んんんんんっっ!」
 彼の背中にゆびを立てて、濃密に舌を絡めながらナナは絶頂を得た。
 「……っ!」
 言葉通りほぼ同時に、薔も彼女の中で射精をした。
 その瞬間、舌はさらに深く滑り込み、息の根ごと奪い去られてしまったような感覚にナナは陥った。


 子宮目掛けて注ぎ込まれる淫水や、放たれた狂熱に体内が充たされる。
 充たされても尚欲しがり、きつく彼を狭めている。
 何度でも、溢れるほどに満たされたくなる、彼だけに。



 「……っは…っ、」
 一度、少しだけくちびるを放して見つめあったふたりは、またくちびるを重ねて繋がった場所で体液を攪拌させていった。
 テーブルの隅に転がった野菜たちは、いやらしい艶に熟れて息を潜めている。

 何にも邪魔されない淫音は止まることを最初から知らなかったみたいに、高く昇り詰めた。

















 ――――――――…


 美咲はもう“あの男”から逃げることを止めた。

 まさか、自分への当てつけのためにあんな悪戯をするとは、夢にも思っていなかった。
 夕月に会いたいという切なる想いを押し殺し、せめて近づきたいという浅はかな考えも、もう二度と抱かないようにして生きていこう。
 そう心に誓い、一糸纏わぬ姿で人知れず涙を流した。
 そもそも、こんな穢れた躰では、会いに行けるはずもない。



 一番に恐ろしく感じたのは、京矢が薔と接触をしたということだった。
 これ以上彼らに、迷惑をかけるわけにもいかない。



 「馬鹿な女だよな、利用するために結婚した男を本気で愛しちまうなんて。」
 楽しげに笑った京矢は煙草に火をつけ、シャツを羽織る。
 男の言葉に青ざめた美咲はこのときから、

 完全に、気配を断った。





 会いたい気持ちや、会いたいのに会えない気持ち、複雑な気持ちたちを交差させてこの世界は廻っている。
















  …――But surely someday……

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