※※第282話:Make Love(&Sex aid).33








 雨が上がってからも客の入りは比較的落ち着いていたため、夕暮れ時、真依は店長さんに頼まれて近くのコンビニに雑誌を買いに来ていた。
 個人的なものではなく全て待ち時間などに客に読んでいただくためのもので、ファッション雑誌や女性週刊誌など、だいたい店内に取り揃えてあるものはいつも決まっている。

 コンビニの雑誌コーナーなので、特にBLコーナーに対する疼きやときめきなども感じず、真依はバッパッと目当ての雑誌だけをカゴに入れてレジへと持っていこうとした。

 ところが途中で、思わず手が止まった。
 目を見開いて、一冊の女性週刊誌を凝視する、それは本日発売されたばかりのものだった。


 (え……?ウソ……)
 棚から引き抜いたその雑誌を、なかなかカゴに入れることができない。
 真依の手は微かに震えている。







 スクープ記事として、今大人気の若手女優の名前が真っ先に飛び込んで……きたわけではなかった。
 「大人気女優○○がイケメンバンドマンRとお忍びデート」という見出しで、何ともベタな謳い文句だったが問題はもちろんそこではない。

 イケメンバンドマンRとは、どう見ても屡薇のことだった。




 (えええ?昨日寝る前に読んだBLにこんな感じのあったよ?屡薇くんたら、お隣さんがいるのに女優なんかと何やってんの!?バカとしか言えない!このバカ!)
 まず真依は、一番最近読んだBL漫画に感化されすぎて彼氏をあまりにも間違った方向で内心怒号した。

 そして、

 (だいたい屡薇くんの表記はLubiなんだから、Rじゃないでしょ!Lでしょうが!左か右かはものすごく大事!)

 表記の間違いについてがどうしても許せず、その雑誌だけはカゴのなかに放った。
 屡薇×薔と表記されるので、Rはどうしても戴けないようだ。
 せっかく上手い具合に、Lの表記ですんなりいくものを(RがSについては今はまあ……)。
 にしても、Lになったところで相手が大人気若手女優となれば、微塵も萌えない。
 あれほどまでに美麗なる彼氏がいるのに屡薇くんは何をやっているんだと、真依は呆れかえった。



 やがて、レジへと向かう前に最も重要というかそれしか重要でないことに気づけた真依は、心の声に留めることができず叫んでしまった。

 「どこがイケメンだよ、ふざけんじゃない!浮気しやがったな!?あのヘタレクズ野郎――――――――――っ!」

 おーうっ、ぉーぅっ…(※真依の激高のエコー)




 周りにいた他のお客さんも店員さんも、思いきりビクッとなった。
 真依は今にも買い物カゴを、雑誌ごとひねり潰しそうな剣幕である。




 ……現実逃避したかったのか、“浮気”というワードに辿り着くまえにいささか紆余曲折しました。
 新人の綾瀬くんに早くも意外すぎるチャンス到来か?














  …――Fact?

    Or is it a lie?

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