※※第273話:Make Love(&Aphrodisiac).167
「はぁぁぁ、夏休みの一日目にぃ、全部の宿題を片付けられる能力があったらいいのにぃぃ……」
ニコニコとこけしちゃんは、溜め息をついた。
宿題は計画的にぃをモットーとしたいこけしちゃんはそれでも、一日で片付けられる能力なら欲しいと思っている、便利な道具とかには特に頼らずあくまでも自分の能力として。
いったんノートのうえにシャープペンを置き、ゆびでコロコロォさせながらこけしちゃんは夏休みにゾーラ先生とどのくらいデートできるのかを考えていた。
おそらく醐留権のほうも、彼女とはできる限りデートがしたいであろう。
欲求不満にも陥っていることだし。
はい、始業式はひたすら校長先生の変態且つ呑気なトークが繰り広げられたということにいたしまして、ついにやってまいりました、
夏休み!
じつは、こけしちゃんにはとぉっても気がかりなことが、夏休み中には起きる予定だった。
変態且つ呑気なトークが繰り広げられていたはずの始業式も、下手をすれば惨状になりかねなかった。
「あのハゲ校長はぁ、相変わらず頭の中もハゲなんだからぁぁ。」
呆れたこけしちゃんはおっとりと、一枚のチケットを手に取る。
それは、学園祭のクラス対抗企画で優勝をした2-5の生徒全員に賞品として贈呈された、一日旅行チケットだった、しかも温泉の。
うっかり賞品を夏休み前に渡しそびれるところだった細宮校長は、賞品の選び方を間違えすぎて夏休み前に殺されるところでもあった。
体育館には戦慄が走った。
2-5のみんなで一日温泉旅行だなんて……校長をぶっ殺しかねない険しさで絶対に許せない生徒さまが2-1に、いる。
ちなみに断じて許せない教師もおんなじクラスにいる。
一歩間違えればステージが真っ赤に染まりそうで、空気を読めた2-5の男子生徒は畏怖のあまり身動き一つ取れなくなるか泣きながらチケットを差し出しに行くかのどちらかに分かれた。
校長先生はもう八つ裂きにしてもらっても本望の心意気で(教育者にあるまじきドM)、ステージ上で失神していた。
薔は差し出されたチケットをそら険しい雰囲気のなかでも適当に一枚受け取ったために、惨劇は免れた。
ゾーラ先生は「なぜそこで二枚ほど奪わないんだ!」と心で訴えつつ、あとで吉川先生をさりげなく脅そうと決心した。
こうして、2-5の優勝賞品は無事に生徒たちへ手渡された。
そのあとに、学園祭のメインイベントだったカップルコンテストで優勝した全カップルにも賞品が贈呈されたが、校長先生が失神中のために教頭先生が執り行った。
こちらは旅行チケットではなく、見た目が可愛らしいチョコレートだった。
しかしながら校長先生は教育者と言えども立派な変態、それはただのチョコレートではなかった。
ただ一組のカップルに贈呈したやつだけは。
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