※※第266話:Make Love(&Sex aid).30
待ち合わせは映画館の前にある、小さな宇宙人の像の前だった。
有名な作品の宇宙人だったが、正直真依は「気持ち悪っ」と思っていたキャラクターだった。
そこで先に待っていたのは、屡薇のほうで、
「あっ、真依さ〜ん、こっち!待ち合わせの時間より5分も早いね?さっすが!」
彼女を見つけたとたん宇宙人の横から笑顔で手を振ってきた。
一瞬捕獲したように見えたというのは、内緒にしておくことにする。
(う……屡薇くんすっごくかっこいいな……)
手を振り返すことはせずに、真依は歩み寄っていった。
映画館デートだからか、ラフな格好(ピンクのジャージではなかった)をしている彼氏の姿にキュンキュンしてしまった。
内緒にしておくけれど。
「5分早いってことは……待ってないよね?」
「真依さん、俺そっちじゃねぇよ?急に視力でも悪くなった?」
「うっ、うるさいな!もうっ!」
真依は最初、宇宙人の像のほうに声を掛け、美形キャラにも拘わらず屡薇はかなりキョトンとした。
そして彼は思った、夏だから薄着を期待していたら彼女はけっこうな重ね着をしていると。
まあ、お洒落ではあるし、脱がすときに燃えるっちゃあ燃える。
「よし、じゃあ並ぼう。」
「ちょっ、人前で手ぇ繋ぐのは恥ずかしい!」
「別にいいじゃん、カップルなんだから。友達とかだと恥ずかしいもんがあるけど。」
「いやあたし、男同士とかのほうがむしろ」
「ごめん、俺余計なこと言い過ぎた。とにかく並ぼう。」
恋人繋ぎを真依はひたすら恥ずかしがり、要らん例えをしてしまった屡薇は彼女の腐的な言葉を遮ってから(それは特権が……)、列に並んだ。
ラフな格好のなせるわざか、とりあえず誰にも気づかれてはいない。
(ん?あれ?上映時間が間違っているような……)
ここで、調べてあったホラー映画の上映時間に目を通してみた真依は、彼から告げられていた上映時間と一作品も合っていないことに気づいた。
そもそもホラーでレイトショーをやっている作品がひとつしかなく、その作品が始まるのは21時近くだった。
「ねぇ、屡薇くん、上映時間を間違えてるんじゃない?」
背伸びまでして確認した真依は、少し呆れつつ彼に尋ねる。
デートの下調べくらいちゃんとしてよね!とも言いたいけれど、年下だしそこは年上として堪えようと思った。
「間違えてねぇよ?だって俺たちが観るのあれだもん。」
「は?」
どこか勝ち誇ったような笑みを浮かべた屡薇は、真依がまったく調べてはいなかった作品の上映時間を指差した。
それはホラーなどではなく、ちょうど彼女が観たいと思っていたラブロマンスの作品だった。
一番に観たかった映画のタイトルが目に飛び込んできた真依は、ポカンとして上手く状況が把握できていない。
「あれってジャンル、ホラーだよね?」
面白そうに笑いながら、あきらかにタイトルからしてまったくホラーではない作品のほうを屡薇は見ている。
「……どう考えてもラブロマンスだよ!」
「わお、やっときた、俺の求めてたツッコミ。」
真依はやっと、悟ることができた。
要するにこれは、サプライズだった。
やられた〜!と思っていても、嬉しくて仕方がないから許すしかない。
がしかし、完全にホラーだと思いながら服を選び抜いていたあの時間は、なんだったのか。
……ふたつのラブとエロ、
木曜日の夜はまだまだ終わりません。
…――Lovers'tonight gets even deeper.
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