※※第262話:Make Love(&Make Love!).16
狂えます、愛しています、
唯一で、無二の相愛に、
どこまでも堕ちてゆくだけ。
とりあえず午前中は『さるかに合戦』のパロディで乗り切ろうにも特に乗り切れもしなかった演劇部の皆さんだが、午後はきちんと救世主が登場してくれたので劇の最中にも感涙にむせそうになっていた。
観客たちも大いに盛り上がりすぎて、ぶっ倒れてしまい保健室へ運び込まれる生徒が続出した。
よって、午前中にメインカップルが保健室でエッチをしたのは、色んな意味で正解となったのかもしれない。
地味な剣士役の副部長こと箕島くんは、午後はほとんど出番はなくステージの裾から惚れ惚れと主人公(ヒーロー剣士)とヒロイン姫のやりとりを眺めていた。
『素敵なお声……早く貴方のお顔が見たいわ。』
限りなく棒読みに近い感情のこもった声で、ヒロインのナナ姫は言った。
観客たちは皆しみじみと頷いた、母校で披露しているからこその当然至極な現象である。
『…――――いえ、誰よりもお美しい貴女にはとても、お見せできるような顔ではありません。では、今夜はこれで……』
仮面をつけているナイトの薔は、その場を優雅に立ち去った。
とんでもない謙遜きたこれ……と思っている観客たちは、腰に力が入らなくて困っている。
むしろ、仮面効果か声が腹にきちゃって、想像妊娠でもしてしまいそうな勢いだった。
ナナ姫とナイト薔のやりとりの前には恋文が読まれたわけなのですが、それについては大会のときに詳しく読み上げます。
「僕の全部も奪ってほしい……」
「気持ちはわからなくもないけど、箕島くん、出番……」
恋文の内容はおそらく、男子ですらも全部奪われたくなるようなやつだったのだろうけど(こけしちゃんもこれは悦ぶ)、箕島くんは一瞬己の出番などどうでもよくなった。
仮面をつけているのにあの溢れんばかりの色気はどうしたらいいんだろう?と思っている皆さんは、ハァハァしちゃってたまらない。
そもそも第二体育館には人が集まりすぎて、暑苦しいにもほどがあった。
「……おい、何なんだよこの暑さは、半分ほど外に放り出してきてもいいか?」
「そっ、それはさぞかし喜ぶとは思いますが、勘弁してくださいましぃ!」
「あ?」
舞台裏に戻ってきた薔はすぐさま仮面を外し、場の暑さにご機嫌ななめとなっている。
少し汗ばんでいるところがまた色っぽすぎて、部員の皆さんは本気で想像妊娠しちゃいそうになっている。
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