※※第256話:Make Love(&Stealth).153

















 火曜日の朝、職員室にて、醐留権先生は悩みながら眼鏡をくいくいさせていた。
 昨夜は愛する彼女からLINEのメッセージをもらえて、内容には悩みもしたが心は浮かれて、残業中から帰宅後までイチャイチャと何度かやりとりを交わした。

 しかしながら、今現在、ゾーラ先生の既読無視でやりとりは止まってしまっている。
 こけしちゃんとのトークは非常に盛り上がったのだが、話の流れから醐留権は彼女にこんなことを問いかけられていた。

 “ゾーラ先生も、薔くんの水着姿見たいでしょ?”





 ……文章だとこけしちゃんはてきぱき喋ることができます。





 (これは正直、どう返せば良いのかまったくわからない……)
 醐留権先生は眼鏡のくいくいを止めて、溜め息をついた。
 既読無視などもってのほかだと思っていたのだけど、彼女のためを想えばどう返事をすべきか悩みに悩む質問である。

 (私が見たいのは無論、桜葉の水着姿だけなのだが……暮中の水着姿を特に見たくはないと返してしまえば桜葉は悲しむだろうし、かと言って、“もちろん見たいに決まっているよ”などと返してしまえば私はいったいどこへ向かいたいのかが自分でもよくわからなくなってしまう……)
 苦悩に満ちているゾーラ先生はしっかり、こけしちゃんを悲しませないための返答を必死に考えていた。
 彼女のことを理解しているからこそ、“特に見たくはない”とはなんとなく返せないし、“もちろん見たいに決まっているよ”などと返したものならそれこそ素晴らしきボーイズラブの攻めになってしまう(こけしちゃんはとてつもなく悦ぶだろうが)。


 (“桜葉の水着姿が見たいよ”の一点張りで何とかしようにも、この質問にはきちんと答えておかねばまずいな……果たしてどうするべきか……)
 ショートホームルームまではまだ少し時間はある、醐留権はギリギリまで返答に悩んでしまってもまだ既読無視を続けてしまう危険性はじゅうぶんなまでにあった。
 何度か薔の水着姿については想像をしてみて、自分は生徒を相手に何をやっているんだと頭を抱えて苛んでいた。
 水着姿を見たがっているこけしちゃんも、立派に生徒ですけど。


 (おや?そう言えば……)
 そのうちに、ゾーラ先生はわりと容易く薔の体つきを想像できるという点に気がついた。
 なんてったって一度、親睦を深めるために男同士(←こけし姉さんも大好きな言葉)でお風呂に入ったことがある。

 なので醐留権は、当たり障りのない内容のつもりで、彼女にはこう返信をしておいた。

 “暮中とは一度お風呂に入って全部見たこともあるからね、水着姿は、正直どうってことないよ。”





 …――――お風呂の件を見事なまでに蒸し返しちゃったよ!

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