※※第253話:Make Love(in Cottage).152
(またいっぱいエッチしちゃったよおおお…!)
自分はどこまでエッチにされてしまうのかわからないナナは、抜かれた後もキスをしてもらったりあたまをなでなでしてもらい、よくよく考えればお腹が空いていたので薔がちょっと遅めのお昼を作ってくれていた。
そういえば彼は来る途中でばっちり、食材の調達をしていた。
別荘は対面式のキッチンではなく、ナナはお手伝いをしようと思ったのだけど激しくしたこともあり休んでいていいと言われた。
こんなにエッチなことばかりしてしまうなんて……嬉しいし恥ずかしいしやっぱり嬉しいしで、彼女は一人リビングにて悶えていた。
お昼を食べたらジャグジーつきのお風呂とやらに一緒に入ろうと言われたナナは、じゃぐじーについては辞書を引いておくべきか若干悩んだりもした(その前におてんばを引こう)。
「ううう、なんかじっとしていられなくなってきちゃったよ……」
休んでろとは言われても、ここは彼の大事な別荘だし、何でも好きに使っていいと言われているナナは思いきってソファを立った。
立つとどうしても溢れだしてきてしまうので、歩き方はぎこちなくなる。
「これ、何が入ってるんだろう?」
なるべく溢れてこないように慎重に床へ座ったナナは、アンティーク調のミニチェストを眺めてみた。
白くて、把手は金色で、見た目が可愛らしいので興味を引かれたという部分もある。
ナナはそろそろと一段目の引き出しを開けてみたが、何も入っていなかった。
やたらとドキドキしながら、二段目、三段目と開けてゆく。
引き出しは五段あり、どの段にも何も入ってはいなかった。
ちょっとガッカリしたナナは最後に開けた五段目の引き出しを閉めようとしてから、違和感を覚えた。
五段目だけ、スムーズに閉じることができなかった。
どこか壊してしまったのかと慌てたナナは、引き出しの下に何かが引っ掛かっている様子であることに気づく。
こんなところに忘れ物がされていたのなら薔に報告しようと思い、ナナはゆっくりと五段目の引き出しを引き抜いた。
下には、開閉の際に角が引っ掛かって少し曲がってしまったのだと思われる、一枚の写真が落ちていた。
裏返しで落ちていたそれを見て、ナナはめちゃくちゃ昂った。
薔の小さい頃の写真である可能性が非常に高いので、期待をしながら写真を手に取り表を見た。
「…――――――――え……?」
心を躍らせていたナナは、愕然とした。
すっかり色褪せた写真には、薔の家に初めて来たときに知ることができた、今は亡き薔の両親が写っていた。
ふたりとも、リビングに置かれていた写真で見た姿より、若い頃なのは間違いない。
そして、カメラに向かって微笑んでいる薔の両親と一緒に、もう一人、スマートな男性が笑顔で写っていた。
手が、震える、一枚の写真のなかで、圧倒的に薔に似ているのは薔の両親ではなかった。
「…………夕月、さん……?」
ナナはぽつりと、その人の名前を口にした。
薔の両親と一緒に写真に写っていたのは、紛いなく夕月だった。
いくつくらいのときに撮った写真なのかはわからないが、なぜ、三人が一緒に写真に写っているのか。
薔の両親と夕月は、写真での雰囲気からして相当仲が良かったのだと思われる。
どうして、薔の両親ではなく夕月が、こんなにも薔に似ているのか。
…――――むしろ薔が夕月に、似ているのだろうか?
疑問はいくつも浮上して、ナナは胸を締め付けられた。
そのとき、リビングへ近づいてくる足音を聞いた気がした彼女は、慌てふためき写真を五段目の引き出しのなかに仕舞っていた。
「どうした?おまえ、具合でも悪りぃのか?」
リビングへ戻ってきた薔は、ドアを開けるなりナナの様子がどこかおかしいことに気づき、心配そうな声を掛けてきた。
「い…っ、いえっ!溢れてきちゃうので、困ってるだけです!」
ナナはとっさに思いついた言い訳のおかげで、それもまあ困ってはいるので赤面することに成功した。
「なら良かった、飯出来たぞ?」
薔は微笑み、彼女を支えて立たせてあげるために歩み寄ってくる。
「は、はい……」
ナナは、何も見なかったことにしようと思った、引き出してはいけないものを引き出してしまったのだ。
それならば、元あった場所へ戻しておくべきだった、でも薔の目の前で五段目の引き出しを開けるわけにはいかない。
過去は、過去に過ぎない、時としてじわじわと闇を伸ばそうとも。
ふたりでいられる今、この時が、全てであり、同じ未来へと向かっている――きっと。
…――A picture calls mystery.
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