※※第253話:Make Love(in Cottage).152















 貸切状態のホテルで濃厚に朝までエッチをしていたら、気づけば否応なしに日曜日となっていた。
 チェックアウトの時間までに共にシャワーを浴びて軽い眠りに就き、あまり眠れてはいなくともナナはお肌もツヤツヤ絶好調だった。
 帰り際に改めて思ったのは、やはりフロントは広すぎて受付カウンターでどこかのアーティストがライブでも開催できそうなほどに絢爛だった。




 ホテルを後にしたナナは、このまま途中でお土産とかを買って(ナナ宅にわんこたちを預けている御礼も用意せねばならないし)、帰るのだと思っていた。
 ところが、ホテルを出てから薔はすぐに、来た方向とは反対に向かって彼女の手を引き歩きだした。

 「あれ?そっちに行くんですか?」
 目をぱちくりさせたナナは、彼に手を引かれながら尋ねる。
 少し驚きつつも素直に、手を繋いで一緒に歩いてゆく。
 「実はこの近くに、おまえを連れて行きてぇ場所があるんだよ。」
 どこか意味深な言い方で、薔は彼女を見た。
 視線にドキッとしたナナは、あれだけエッチをしていたというのに躰の奥が切なく疼いてしまう。
 むしろずっと彼を感じつづけていたから、躰はまだ婬に熟れた熱を冷ませないままでいるのかもしれない。


 「ど、どこに連れて行って……くださるんですか?」
 無性に頬が熱くなったナナは隠すみたいに上目遣いで、聞き返す。
 「それは着いてのお楽しみだな。」
 悪戯っぽく笑って返した薔の髪を、海から吹いてくる穏やかな風が揺らしてゆき、上目遣いにもナナは見惚れた。
 彼は彼女のぶんの荷物も持って、さりげなく道路側を歩いている。
 ふたりが歩く道は海に沿ってなだらかなカーブを描き、どこに連れて行ってもらえるのかわからないナナは心が浮かれていても面映ゆい気持ちになっていた。



 「あっ!あのっ、薔!着くまでのあいだ、しりとりをしていきませんか!?」
 その面映ゆさを高いテンションでどうにかしようとしたナナは、歩きながらしりとりを提案する。
 「別にいいぞ?おまえから始めろよ、」
 彼女の心情がよくわかってしまう薔は、ちょっとだけ強く繋いだ手を握りしめた。
 わざとやられているのか、ナナのくすぐったい恥ずかしさはますます高まる。

 「えっと、……そうめん!」
 この物語はまだ7月の上旬です、そうめんやひやむぎなどが美味しい季節でもあります。
 ナナはしりとりに於いて出してくるのは必ずと言っていいほど食べ物で、続ける気があるのかないのかよくわからないものばかり選んでくるのであった。





 「おまえはほんとよく、始まる前から終わらせるな?」
 「あああ!すみません!わざとじゃないんです!」
 「わざとじゃねえのは知ってる、だから余計に可愛いんだよ。」
 「きゃわああ!」
 結局、しりとりが始まる気配はなくとも、終始ふたりっきりワールド全開で薔しか知らない目的地へとふたりは向かって行った。

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